東洋医学の「肺臓」って何だろう

東洋医学の「肺臓」は、西洋医学でいう肺とは違います。これは杉田玄白が、東洋医学の概念と西洋医学の概念のちがいを知ることなく、東洋医学の言葉である肺臓を、西洋医学に転用してしまったために起こった混乱です。そのため、同名異義の言葉が、両医学の中に混在してしまう結果となりました。そこを念頭に置いて読み進めてください。

≫詳しくは「五臓六腑って何だろう」で説明しました。

それからもう一つ大切な前提があります。東洋医学の言葉は、すべて機能に名づけられたもので、物質に名づけられたものではないということです。これから肺臓について説明しますが、肺臓を物質として考えて読むと分かりづらくなります。あくまでも機能 (=気) についた名称と考えて読み進めてください。

≫「東洋医学の気って何だろう」をご参考に

感覚・反射と肺臓

「魄」とは

まず、呼吸をする器官である西洋医学の「肺」のイメージを除いてください。
肺臓は、「魄」「宣発・粛降・通調」という言葉で象徴されます。
それらを理解する上で欠かせないのが肝臓です。 肝臓を陽とすると、肺臓は陰だからです。

≫「陰陽って何だろう」をご参考に。

「魄」から行きます。肺が魄なら、肝は魂です。魄と魂は陰陽関係にあります。この陰陽は、一体として考えるなら、無意識、すなわち自律的機能です。この陰陽の内訳は、
陽 (魂) =不可視的機能、
陰 (魄) =可視的機能
…と考えてください。肝臓と肺臓は表裏一体。身体の自律機能と、精神の無意識 (オートマチックな意識) を支配します。

「白」と「鬼」

ところで魄という言葉、聞いたことありますね。「魂魄凝って…うらめしや…」の魄です。

魂魄の字源は…。

まず、魂と魄に共通する「鬼」からです。
「鬼」は死者の首を持って踊る様を表すそうです。転じて霊魂。無意識を意味します。

魂とは。字源からみると、
「云」は「雲」と同じで、形の無いもの、つかみどころのないものの意。自意識とは異なる、つかみどころのないもの。それが魂の字義です。「東洋医学の肝臓って何だろう」で説明したように、魂は無意識でした。無意識とはオートマチックな機能のことです。魂には、将軍のような猛々しさと、木のように上に伸びる力があります。

それに対して魄とは。字源から見ると、
「白」は白骨のことだそうです。「云」のつかみどころのないもの、に比べて物質的です。
魄は魂よりも肉体的な意味が強いと考えられます。

魂は形のない無意識。
魄は形のある無意識。
こうまとめられます。もう少し分かりやすく展開します。

自覚にのぼる無意識

魂が意識できない無意識反応だとすると、
魄は意識される無意識反応です。

魂の場合、
意識できない無意識反応とは、免疫・消化吸収・心臓の鼓動・睡眠・排便・体温調節・睡眠時の呼吸などが当てはまります。「東洋医学の肝臓って何だろう」で説明したとおりです。

魄の場合、
意識される無意識反応とは、温痛覚・触覚・視覚・臭覚・聴覚など。勝手に筋肉が動く、勝手に呼吸をする、熱いとき手を引っ込める、などが当てはまります。つまり、感覚・反射的動作です。感覚・反射的動作の異常は、まず肺臓を意識して治療していきます。

発汗・排便・排尿・呼吸。このあたりは、意識できる部分と意識されない部分があります。魂と魄が協調して行う自律的機能と言えます。

もちろん呼吸に異常があれば肺臓を意識はしますが、決めつけることはできません。

体液循環と肺臓

肺をシンボライズする言葉、魄のつぎは、「宣発・粛降・通調」についてです。これは主に、体液の循環のことを言っています。

粛降とは

まず、粛降からです。
粛降とは、静かに下に降ることで、肝臓の上に昇ることの逆です。まず、おおざっぱにそう理解します。肺臓と肝臓は陰陽関係でした。肝臓と肺臓は協力し合って上にあげたり、下におろしたりして、体液の流通や循環を行うのです。

ストレスや運動不足によって、体の循環が損なわれた場合、肝臓・肺臓をうまく調整することで、病気を治していきます。「滞った気をめぐらせる」ということは、肩こりから癌まで、どんな病気を治す場合にも重要なことです。

膀胱による体液循環

体液循環の中で、肺がどのような役割を担うのか見ていきましょう。まずは大雑把な流れからです。

体液はまず、大腸にストックされます。それを膀胱が温め、上に向かって蒸発させます。蒸発したものは澄んだもので、これが体液として循環する最初となります。蒸発させて煮詰めたものが尿として下降します。こういうことが、人体生命のいちばん下の部分で行われています。

肺による体液循環

人体生命の上の部分では、これと同じようなことが行われます。すなわち、肺は陽気を使って、皮膚に向かって体液 (汗) を蒸発させます。これが宣発です。宣発してもまだ残った体液がたくさんありますので、それが下降します。これが粛降です。

どの程度宣発し、どの程度粛降するのか。こういう調節をしながら体液を流通させる。これを通調といいます。だから、大小便がうまく出なかったり、むくみが出たりしたときに、肺臓を治療することもあります。

衛気…寒さの防ぎ

宣発について、もう少し詳しく説明します。膀胱によって温められ蒸発 (気化) した水蒸気は、温める力を持っています。それが肺臓によって、さらに皮膚に向かって宣発される。これを衛気といい、寒さから身を守るバリアのような働きをします。

衛気は温かい水蒸気のようなものです。よって衛気は体液循環のなかに位置づけることができます。

だから、悪寒をともなうカゼを引いた時は、肺臓や膀胱を治療するのです。気化・宣発の力のもとは、陽気すなわち温める力です。陽気の大本は腎臓にあります。

肺臓と膀胱は、このように腎臓と深く関係します。だから腎臓を強くすると、膀胱経 (脊柱起立筋) が強くなり、肺臓 (反射的動作) が強化されるのです。小児の脳性麻痺に腎兪を用いる理由です。

≫「 脳性麻痺 (1歳9カ月) 」をご参考に。

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