体の経営コンサルタント

76歳のご婦人。

腰痛の治療で3年前から通院中。
当時は痛みで美容室にも行けず、精神的に不安定だったが、ここ奈良から関東の娘さんの家に4泊5日で遊びに行けるところまで回復。

ただし、毎年、夏に腸の出血がおこっている。この出血は脾の弱りによるもの。そのたび、鍼灸のみで治しているが、今年は起こしてほしくない、というのが治療家としては本音。

「先生、昨日は腰にシップをはるのを忘れてました。」

「ああ、シップね。シップはあまり貼らない方がいいですよ。薬の痛み止めと変わらないから。痛みというのはね、体が『これ以上、動かないでくれ』っていう信号だから。例えば骨折して、痛みを感じなかったら大変でしょ。そのまま動いてしまうと、大変なことになる。痛みが出るということは、動いてはいけない理由があるということです。慢性的な痛みを持っている人は、たいがい疲れて『体力の貯金』がないんです。だから出費を防ごうとして、体が『痛み』という信号を出すんですよ。痛み止めを使うということは、この信号を消してしまうということ。危険なんです。」

「なるほど」

「コルセットも気をつけて使ってね。これも痛み止めと一緒だから…」

「でも、これがないと、何もできませんわ。」

「使っていいんですよ、コルセット。でもね、コルセットがなかったら、どの程度まで動けるか、ということを一応、想定してね。どうでもよいようなことにまで、コルセットを使って動いていると、そのうちヒズミが出てきます。毎年おこってる腸の出血なんか、そうですよ。だから、体力をつける必要があるんです。体力の貯金。これさえあったら少々動いても、体は『動くな』の信号を出しません。思いがけない出費があっても、余裕があるわけやから。」

「体力ですか。」

「コルセットは借入金だと思ってくださいね。この借入金を『自分のお金だ』と思っていると、決算の時にえらい目に合う。」

「そうですか…。」

「いま、○○さんの体はいい状態です。これはまちがいない。だから娘さんのところに行こうという気になれるんです。ただね、いい状態ではあるが、貯金がない。」
「娘のところに行って悪くならないでしょうか。」

「たかだか5日くらいどうってことないですよ。いま、家で散歩してもらってるでしょ。10分間の散歩を指導してますね。」

「はい。」

「この散歩は『投資』。投資する額が大きければ、バックも大きい。でも体力のない会社が投資しすぎると、倒産するでしょ? だから、今は10分を超えてはいけない。10分の散歩が15分、20分になるように、治療をしていきましょう。」

「はい。」

「睡眠は、寝かせておけば付く『利子』です。規則正しい生活をして、適度な運動をしていれば、必ず貯金は出来てきます。でもね、どのくらいが適度かっていうのは、自分で判断は難しいんですよ。だから僕らみたいなプロがいるわけ。まあ、体の経営コンサルタントみたいなもんです。いつ投資すべきか、いつ投資をやめて、手堅く寝かせるかは、プロにしか分かりません。まあ、世間の景気を見定めるのは素人さんには難しいと。」

「なるほど」

「どのくらいの貯金が欲しいかは、人それぞれの価値観で違いますよね。『私は1千万はほしいわ』という人もいれば、『貯金なんか百万あれば十分』と言う人もいますね。なかには『ワシはその日暮らしでええんや』という人も。でも、貯金はあるに越したことはない。その日暮らしでいいという考え方もあるけど、いつ、予想しない出費があるか分からない。先見の明あるコンサルタントなら、そういうことも見越してアドバイスするはずです。」

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