下痢・嘔吐 (19歳)

19歳 男性

「下痢が止まらないんやねえ、お母さんから聞いたけど。」
「はい、4日前からなんです。」
「急に?」
「はい、でも前からおかしくて…。高校の時はテニスしてて、体重60㎏あったんですけど、専門学校にはいってすぐ、去年の6月に上げ下ししてから、吐くのが恐くなって…。その年の9月にも上げ下しして、今は52㎏しかないんです。」
「ご飯の量が減った?」
「ハイ。たくさん食べると吐きそうな気がするんです。そしたら、4日前 (9/4) の午前4時に急に下痢して、また午前7時に下痢して、それから止まりません。食べると吐きそうでこわいので、おかゆを食べてます。4日前から毎晩追いかけられる夢を見ます。」
「その、4時と7時のとき、寒気は?」
「わかりません、でも7時のときは熱っぽく感じました。」
「下痢は臭かった?」
「4時と7時の下痢は臭くなかったけど、それから今日までの下痢はすごく臭いです。」

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疑わしいのは外感病。外気の寒邪や熱邪などが体に進入する病態だ。明け方に下痢しているので、寒邪が疑わしい。寒邪が進入して下痢する病症は、傷寒論に詳しい。太陽陽明合病の葛根湯証、あるいは太陽少陽合病の黄芩湯証。あるいは葛根黄芩黄連湯。

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4時と7時の下痢は臭くなかったとのことだから、その時点では葛根湯証が疑われる。現時点では下痢は臭いので黄芩湯もしくは葛根黄芩黄連湯。

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下痢してから悪夢をみるのは、正気が傷つけられたと言っていい。その虚に乗じて、肝臓に邪が入った可能性がある。悪夢は肝臓が異常事態になったもの。一度上げ下ししてから、吐くのが怖くて食べなくなるほど、もともと肝気鬱結の傾向が強い。そういう体質の人は少陽病になりやすい。ゆえに黄芩湯の可能性が高い。

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もともと体重減少がみられるほど脾臓に負担がかかっていた上に、今回の下痢で急に脾臓のレベルが落ち、それに呼応するように肝臓の邪気のレベルが上がった側面も考えられる。脾臓と肝臓はシーソー関係にあるからだ。脾臓の弱りも考慮に入れるべきだ。

憶測だけでは始まらないので、脈を診る。やはり外感病で、表寒がある。カゼみたいなものだ。女脈なので四霊 (滑肉門・天枢・大巨) の可能性。ツボを探ると左滑肉門に反応があった。滑肉門は太陽少陽合病に効く。黄芩湯証を意識しながら、今後の経過を観察することにする。

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1診目
左滑肉門に夢分流打鍼術。滑肉門で、太陽と少陽にまたがる寒邪をとる。この寒邪が少陽で熱に変化して臭い下痢が出る。吐き気の原因でもある。また滑肉門は、正気を傷つけることなく気滞を取ることもできる。。
左公孫・左臨泣に金製古代鍼。陰陽の幅を増やしながら脾臓をバックアップする。

2診目 (3日後)
治療後から下痢なし、吐き気なし。コロッケとか食べている。固まった大便が出た。
表寒の脈あり。
左滑肉門5分置鍼。
左公孫・左臨泣に金製古代鍼。

3診目 (4日後)
テニスをしたら少し軟便になった。
表寒の脈あり。
治療同前。

4診目 (3日後)
表寒の脈が消える。「調子いい。下痢してない。吐くとか考えない。」とのこと。吐くんじゃないかという不安がないのは、表寒だけでなく、気滞も取れて肝臓が安定してきた証拠。
右内関5分置鍼。肝臓の条達異常による気滞 (肝鬱気滞) を取る。

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その1ヶ月後、お母さんに聞くと、
「普通に食べてるし下痢もしてない。バイトで夜更かしばっかりしています。」
とのこと。元気そうで良かった。 (^^ゞ

もともと肝臓の条達がスムーズでなく、気滞を生じやすい体質。高校まではスポーツをやっていたので気滞は生じなかったが、専門学校に通うようになって運動量が激減。気滞が急に増えた。神経質な性格に気滞が加わり、そこにカゼによる下痢・嘔吐をきっかけに、食べるのが恐くなってしまった。食べる量が少なすぎ、脾臓の弱りが出る。脾臓が弱ると、ますます肝臓の気滞がひどくなる。この悪循環の中で、今回の寝冷えによる下痢が生じた。…と、まとめることができる。

因みに、3診目で「テニスをしたら少し軟便になった」のは、表寒の脈が取れ切らないうちに、運動したからであると推測できる。いわゆる「カゼ」は表寒というくくりの中の一部だ。カゼに運動は禁物。ゆっくり休んでね。 (^^)

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