下腹部の発疹

心筋梗塞で10年前から治療している70代前半の男性。
心筋梗塞が落ち着いた今も、健康維持のために、週に一回の治療を欠かさず続けておられる。
寡黙な方だが、珍しく自分から症状を訴えられる。

「ここなんですけどね…」

下腹部をみると、直径5㎝ほどの範囲に赤い発疹が密集している。痒さは「少し」とのこと。
下腹部は足の厥陰肝経の道筋が通る場所。
肝臓の異常として痒さが出る場合がある。
肝臓の異常があるとすれば、ストレスなど、それなりの原因があるはずだ。

「こういうのが急に出るということは何かあったはずですが…。たとえばストレスとか、一生懸命に気を張るような事とか、なかったですか?」
「そういうのはなかったですがね、ただ、ここ1か月ほど、休みなしで出てるんです。ちょっと無理してるなーっというのは分かってるんです。」

この患者さん、地元の役職を多く兼任しておられる。

「ああ、それでわかりました。ちゃんと治療しますから、病院に行かないように、薬は塗らないようにしてください。休みなしで頑張ったため、体がオーバーヒートしてるんです。それを冷ます力が足りないので、熱が逃げ場所を失って、皮膚に発疹を作って外へ出ようとしてるんです。ここに薬を塗ってましにしてしまうと、熱は外へも逃げられず、深いところで閉じ込められてしまう。これは病気のもとになるので、よくありません。」

太衝の反応を見る。右側に重厚な沈んだ邪気を持っている。これを取り去り、左右の太衝の反応がそろえば、発疹は引くはずだ。
腹を見る。反応が弱い。虚が中心と断定。
脈をみる。沈んでいる。腎臓が弱っている可能性が高い。

肝 (木) が腎 (水) を吸い取った形。
木が強すぎると、地下の水をどんどん吸い取り、水が弱くなってしまう。
肝が暴走すると、腎が弱ってしまうという病理の説明。

再度、腹をみる。空間として左下の前に反応がある。
照海をみる。左に生きた反応。

見立ては、腎陰虚>肝経湿熱。

左照海に30分置鍼。腎臓の陰を増す治療。

再度、腹をみる。反応が強くなった。実が中心になっている。
太衝の反応を見る。右にあった重厚な邪気がなくなり、左太衝にその邪気が移っている。
左太衝は生きた反応を示していない。左太衝を中心とした空間を、掌をあてて診る。上に出ている。
太衝よりも上のツボ、蠡溝に生きた反応がある。

左蠡溝に速刺速抜。肝経の湿熱をとる。

太衝をみると、重厚な邪気はなくなり、左右が整っている。

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1週間後、来院。

患部を診る。よし! きれいになってる! 傷が治った後のような、色素沈着による微妙な色の違い以外は、全く異常なし。発疹が消えてから、相当の日数がたっているのがうかがえるような皮膚の状態。

「あれから、どうでした?」
「ああ、もう大丈夫です。」
「すんなり良くなったんですね?」
「はい、はい。」

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