東洋医学の月経って何だろう

生理は成熟の証し

女性の方で、生理前になると体調が悪くなるという話はよく聞きます。そんな体調の悪さですが、生理が始まると無くなってしまうというのが特徴です。月経前緊張症 (PMS) といわれます。

この病気を分析するのに必要なのが、正気と邪気です。
正気とは…気と血。
邪気とは…気滞・湿痰・邪熱・瘀血。
でしたね。

そもそも生理は、体力が充実することで起こります。

たとえば初潮は、子供の未熟な体力から、大人の成熟した体力になった、という判断を体が下すことで、生理が始まります。それから閉経。一般に45歳以降と言われます。老化によって体力が衰えた、という判断を体が下し、生理は途絶えます。

生理周期は、初潮と閉経を、ひと月サイクルで小さく繰り返している、と言えます。すなわち、月経直前が最も体力が充実したとき。初潮と同じく、体力が充実したと体が判断したときです。月経が終わった直後が、閉経と同じく、体力が消耗しているときと言えます。

これが生理を「気」 (=機能) という切り口で考察するうえでの基本となります。 体力とは正気のこと。力=機能=気です。正気がどれだけ成熟し、旺盛になっているかで、生理の有無が決まります。

生理が飛ぶ

生理を起こすか起こさないかは、体の無意識…オートマティックな働きによって決定されます。

ダム湖に例えてみましょう。近々豪雨があると予想される。河川の氾濫が予想される。すると、ダムはあらかじめ放流します。あふれると災害につながるからです。また、干ばつが続いているとする。するとダムは放流をストップして、できるだけ水位を維持し、生活用水が枯渇しないように対策します。

生理も同様に、たとえば疲れることが度重なると、正気が足りなくなります。すると、生理の出血量をその月だけ減らしたり、生理をその月だけ飛ばしたりします。そして、充実してくると生理を起こすのです。

生理が飛ぶということは、体力を消耗する何かがあった可能性が高く、それは良くないことです。しかし、飛ぶことによって「体力を回復させようとする働き」が機能していること、それは良いことです。

閉経が遅い

そういう意味で、生理が50歳を過ぎても普通にあるという人がいますが、これは良いことです。体力の余りが、いつまでもあるということは、若い証拠、喜ぶべきことです。

ただし、生理を止めることで「体力を回復させようとする働き」が機能しないことがあります。そういう状態を疏泄太過と言いますが、体力の余りを出す力がもうないにもかかわらず、いつまでも生理を起こし、体力を水面下で消耗させることになります。疏泄太過は自覚症状が出ません。健康状態と見誤りやすい病態です。

ダム湖の水位が、既に放流してはいけないレベルに下がっているのに、放流が病まない。

閉経が遅いのは、良い場合と良くない場合があるのです。

初潮が早い

因みに、最近の女の子は、初潮が早いく来るケースが多くなっています。これは栄養状態が良く、性的情報も豊富で、体力 (精) の成熟が早い、といわれますが、それだけではないようです。

現代社会はストレスが多い。これは子供も同じ。おまけに運動不足です。ストレスや運動不足は、気滞と呼ばれる邪気を生みます。この気滞があるために、小さなダム湖として、小さくまとまってしまう場合があります。つまり、体力を収めるための容器 (衝脈・任脈) が大きくならない場合があるようです。

この容器とは、体の大きさではなく、あくまでも体力 (=正気) を貯金しておく容量のこと。そういう意味では、パソコンの容量みたいなものです。東洋医学的に言えば、「陰陽の場」が狭い、とか、広い、とかいう表現をします。

≫「陰陽って何だろう」をご参考に

そもそも生理は、生まれたときから成長し続ける陰陽の幅が、最高点に達したときに起こります。体力を収める容器 (ダム湖の容量) とともに大きくなり、その成長が止まれば、そこが最高点です。早く成長が止まれば、早く完成する。成長の終わりは完成を意味します。つまり、成長しきらないうちに、成長が止まってしまった。すると体は、これを成熟とみなし、生理を発動させる。

容器が小さいため、体力も少ないままに容器が満たされる。体力はすでに成熟していても、量が少ないのです。ダム湖も受け入れられる水量が小さいと、干ばつの時に足りなくなってしまいますね。でもすぐにあふれる。小さいということは体力がないということです。

実際、初潮が早く来ているのに、生理の量が少ないとか、生理不順とかで、「血虚※」と診断される場合があります。正気の不足があるわけです。そういうケースが結構あります。生理が早く来たからと言って、体力があるわけじゃない。健康と言えるわけじゃない。

※血虚…「東洋医学の血って何だろう」で詳しく説明しました。

なぜPMS?

話をもどします。

さて、先程こう説明しました。生理は正気が旺盛になるから起こる。月経直前が、最も体力が充実したときで、月経直後は、体力が消耗しているときである。

あれ? おかしくありませんか? 生理前は、正気が最も旺盛なのに、なぜPMSの人はしんどいのでしょうか。しかも、そのしんどさ、生理開始後に楽になるのは、なぜでしょう?  生理前に正気が旺盛なら、体は健康なはずです。整理が始まって正気が消耗するなら、体はしんどいはずです。

ここまで、生理は正気が旺盛になるから起こると説明してきました。中医学基礎でも、そう説明しています。しかし、それはあくまでも基礎です。

実際は、さきほども触れましたが、以下のようにまとめることができると思います。

増大する陰陽の幅が最高点に達したとき生理がおこる。

 

そして、正気は陽、邪気は陰と考えると、生理前に体調が悪くなる理由が見えてきます。

つまり、生理前に旺盛になるのは正気だけではないのです。邪気も一緒に旺盛になるのです。正のエネルギー (陽) も負のエネルギー (陰) も、両方一緒に旺盛になるのです。

生理がおこる機序のカギは、「陰陽」にあります。この陰陽とは、正邪という概念をもふくむ、実に大きな概念です。

生理を邪魔するもの

生理をおこすために必要な正気といえば、「血」と「気」が挙げられます。血は、妊娠のための物質的土台です。これを一周期かけて満たし続けてきました。妊娠しなければ、満たされた妊娠土台は、ただの不要の血になります。次期妊娠に向け、新しいものに交換する必要がある。

ここで必要なのが、推動作用を持つ「気」です。推動作用とは、気の一種、気の一つの横顔で、川の流れのように、よどみなく循環させる働きのことです。この働きが、子宮内で不要となった血を、一気に外に押し出し、排出する。

このとき、もしも邪気が存在したらどうなるでしょう。たとえば気滞があったら推動作用を邪魔します。たとえば瘀血が存在しても推動作用を邪魔します。

邪魔すると摩擦が起きます。軋轢が生じます。

生理痛とイライラ

生理の時は、正気である気や血がパワーアップする。すると生理が起こる。同時に、邪気である気滞や瘀血もパワーアップする。すると何が起こるか。軋轢です。摩擦です。抵抗です。

出血そのものは最後まで完結する。周期的にも、ずれることがない。これは正気の力です。邪気が邪魔しても、それを何とか押しのけ、生理を完了さようとする。

ただし、邪気が邪魔する。軋轢・摩擦・抵抗が伴う。気滞や瘀血の症状が伴います。

気滞の症状とは…痛み・イライラです。
瘀血は…気滞の症状をより重症化させます。

このようにしてPMSは起こります。

さらに、こうした摩擦が大きすぎると生理不順に発展します。

また、長期にわたる邪気の横暴に正気が負けると、正気が慢性的に弱ります。すると、生理後半あるいは生理後の体の不調を訴えるようになります。これは病の進行と体力の低下を意味します。

PMSを治すには

PMSを治すにはどうすればよいか。普段から気滞のレベルを下げておくこと。これにつきます。生理前になってから焦っても、どうにもなりません。

気滞がなければ瘀血も存在しません。滞りがないわけですから。普段の気滞のレベルが低いと、生理前になってもさほど気滞は増しませんね。邪気よりも正気のほうが格段に優位に立っていれば、両方パワーアップしたところで、摩擦は少なくなります。

気滞のレベルを下げるには、鍼や漢方薬が有効です。ただし東洋医学の診断に基づいた、鍼や漢方薬ででなければ効きません。

養生としては、運動が大切です。感謝が大切です。運動は、気の推動作用を強くします。感謝はストレスのもとになる情動を消してくれます。感謝は難しいな…。でも大切。一緒にがんばりましょう。

「月経異常総論…東洋医学からみた4つの原因と治療法」では、専門的な説明を展開しました。興味のある方はどうぞ。

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