大自然の循環、健康に生かせ

漢方では、体を養ううえで大切な要素があるとする。それは季節である。季節とは、春夏秋冬のことだか、それに対応して「生・長・収・蔵」という言葉がある。春に生まれたエネルギーが、夏に拡大・成長し、それが秋には縮小・収束され、冬は蔵して静かに春の生を待つのである。これは、植物・動物を問わず、この世に生きとし生けるものすべてにに共通することであるという。

ここから推測できるのは、活動期は春と夏、ということである。私はこのことを知ってから、春夏は積極的に体を動かすようにし、秋冬はそれを上回らないように心がけている。

私は家庭菜園をやっている。自然農法というのは、春と夏いそがしく、秋冬は仕事が少ない。自然と漢方理論にかなっているのだ。自分で体を動かして得た旬の食材が美味しくないはずはなく、食事が美味しければ気分もさわやかになるのは自然の成り行きである。そして、汗を流そう!という意欲につながる。

私の3人の子供たちは、こうした季節の野菜ばかりを食べているが、みな驚くほど野菜好きである。秋冬春と我慢して夏に食べるキュウリやトマトのうまさに大騒ぎし、秋になればホウレンソウのおひたしの取り合いになるなど、旬のものしか食卓に出さない我が家では毎年のことだ。メタボリック症候群などとは縁の遠い大人になるのではないかと期待している。

季節に合わせるだけで、不思議と良い循環ができることを、私は数多く経験してきた。

季節が体に及ぼす影響は未知の部分が多いが、気温が低いと血流が変化することがある。そんな時は血圧が高めらな無理をしないことも大切だろう。それでなくても、寒い冬は何となく気ぜわしいものである。身も心もゆっくり、ゆったりと保つことが、休息期の冬に応じた過ごし方だ。季節は変えられないので、生活を少し変える。二千年前からの知恵である。

漢方の理論は、科学的裏付けのないものが非常に多い。しかし、根拠が確認できていないことでも、それに関心さえ持てば、見逃していたものが見えてくるかもしれない。

例えは、「脈診」という手法が漢方にはある。脈診とは、手首の動脈を触診し、体全体が正常か異常かを判別する漢方独自の診察方法であるが、正常と診断される脈の状態は、季節ごとに異なる特徴を持つ。春には春の脈、夏には夏の脈があるのだ。私は臨床の中で常にこれを用いている。春夏は元気はつらつ、秋冬はおだやかに、という大自然の循環にうまく乗せるためだ。四季それぞれの「健康」である。
国家の命題である医療費削減をスムーズにするためにも、もっと漢方理論を積極的に参考にし、体と季節について関連性がないか議論があってもよい。根本的な病気の解決方法のヒントが「季節」に隠されていると思う。

(2007.4.10.朝日新聞)

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