熱中症パラドックス…暑いときに熱いものを食べる…

暑い夏は熱中症予防のためにも体温を下げることが必要だ。

体温調節は、熱中症や低体温にならないための重要な生理作用である。そもそも体温調節は、外気温の暑さ・寒さの変化に対応するためのもので、皮膚の温度受容器によって感知される変化を起点として、自律神経系・ホルモン系・体性感覚系を介して、体温の変化を防ぐ全身的反応であると説明される。

体温調節の仕組みはいろいろあるが、皮膚血流も重要な要素である。体温が上昇すると皮膚血管が拡張し、皮膚血流が増大して、体熱の放散が促進される。逆に、体温が低下すると皮膚血管が縮小し、皮膚血流が減少して、体熱の放散が抑制される。

皮膚血流が多いと深部の体温が逃げやすくなる。皮膚の血流は、多いと皮膚温が高くなり、少ないと低くなるはずだから、皮膚温が比較的高い人は熱の放散がしやすく、低い人は熱が逃げにくいとも言える。

つまりお湯が、普通の容器のほうが冷めやすく、魔法瓶のほうがさめにくいのと同じ原理である。普通の容器は手で触れると温かいが、魔法瓶は冷たい。表面の温度が低いものは冷めにくいのだ。これは人の体でも同じである。皮膚が温かいか冷たいかで、体温がうまく逃げているかそうでないかが推測できるのだ。

皮膚表面と体深部の温度差をなくすような熱伝導が生じれば、深部の熱が皮膚部や体外に速やかに移動し、体温の発散がスムーズになる。実はこれは、夏場の臨床で、私が最も意識していることである。体調のすぐれない人は、皮膚に触れるととても冷たい。なのに汗をたくさんかく。皮膚を暖めるような治療がうまくいくと、汗が止まり、涼しくなったという声が聞かれる。皮膚血流が増大して深部温度が下がったためと考えられる。

体の奥の熱が表面に浮き出てこないと汗が出ても逆効果である。その汗は皮膚温だけを奪ってしまうことになり、ますます体温の放散ができず、もっと暑くなる。だからさらに汗が出る。まさに冷や汗だ。これでは高熱や脱水を起こしやすく、熱中症になりやすくなるのは当然である。それにしても、暑い夏に、皮膚温が下がるほど皮膚血流が悪くなる原因は何だろう。

本来、皮膚血流が抑えられるのは、冬などに寒さから身を守るための反射である。寒冷の刺激は、皮膚受容器を興奮させ、脳の視床下部にある体温調節中枢がその情報を受け取ると、皮膚血管の交感神経の緊張が反射的に高まる。すると皮膚血管が収縮して血流が抑えられ、体温の放散を防ぐ。

ただし、この説明にかけているものがある。体温を低下させる外的要因は、外気温ばかりではなく、冷たい飲食物もあるということだ。だが飲食物温度による体温変化とその調節メカニズムについて、医学書の記載はなぜか皆無である。口腔内に寒冷の刺激を受けた時、あるいは腹部消化管が低温化したときの血流の変化についても、研究がなされた形跡はない。奈良県立医科大学に問い合わせると、「確かに研究はされていません」とのことだった。

この現状を見る限りでは冷たい飲食物に関する視点が現代医学において欠落しているといわざるを得ない。

血流変化はあくまでも反射である。自然界にはありえないほどの極端な低温の飲食物で、体温の放散を抑制する反射機能が作動してしまうことはないのだろうか。夏に誤作動を起こすことは危険である。冷たい飲食物の過剰摂取は、体に「冬かな?」と勘違いさせてしまうのである。

高熱時のような体の絶対的温度を下げるべき時は別として、通常は、温かいものを摂取する方が、皮膚の血流の維持に役立ち、その結果、深部体温の発散がスムーズになるのではないか。例えば、夏に熱い風呂がかえって気持ちよく感じたり、風呂あがりが涼しく感じるのは、皮膚が温まって皮膚血流が増すことによる要素もあると思う。冷房の部屋から屋外に出ると、余計に暑くなるのは逆の原理が働くからだろう。私個人の感覚としては、夏に温かいものを飲食すると、そのときは暑くて汗が出るが、後が涼しい。

「暑いときに熱いものを食べる」。昔からこういうんだと、私は一人のみならず複数の年配の方から聞いた。格言には逆説めいたものが多いが、言い得たものも中にはある。

炎天下でスポーツしたり労働したりすると、体温が上昇しています。そういう時に熱い飲み物…40℃以上のもの…を一気に飲むと、体温がもっと上がって、かえって良くありません。「ひとはだ」の温度…37℃くらい…の飲み物を飲むようにします。これなら体温を上げることなく、皮膚血管の拡張を維持できます。

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