天井穴…坐骨神経痛

73歳女性
「右の腰から足にかけて痛いんです。昨夜は寝られなくて…」
ベッドで寝ていても、じっとしていられないほど痛がっている。
聞くと、右腰→右臀部→右大腿外側にかけて、ズキズキするような重い痛み。
「分りました。ちょっと辛抱していてくださいね。」

動くときに痛いのは、体が「ちょっと休んでよ」という信号を出しているから。休めば疲れが取れるので、体の回復力が戻る。

ところが、寝ていて痛いのは、よろしくない。寝ても疲れが取れず、体の回復力が余計に弱ってしまう悪循環に陥る。

ベッドで痛みにもがく患者さん。この場でましにしなければ。きっとできる。

脈診…

沈脈。腎臓に負担がかかっている可能性。
尺位の外側から寸位の内側にかけての脈を蝕知。陽虚 (冷え) の可能性が高い。
緩脈。湿邪の影響を受けている可能性がある。
尺位から寸位に向かう脈の流れがある。外邪による表証がある。

舌診…

左舌根部の苔がハゲている。舌根部の異常は腎臓に負担がかかっている可能性。ハゲは陰虚 (熱) を示す。ただし、舌に潤いがある。これは冷えを示す。

脈・舌から、腎陽虚>腎陰虚 の可能性。

背候診…

左三焦兪に反応。腎虚を示す

原穴診…

右衝陽に反応。湿邪の可能性。

腹診…

虚。左上に空間的偏在。

診断…

以上のように、情報を並べると、寒熱虚実が入り混じって、分かりづらい。しかし、一つ一つの情報を断片的に考えず、病因病理の流れを一つのストーリーとして考えると、主要矛盾が見えてくる。

●寒熱の弁証

そもそも、70歳を過ぎると、誰でも腎の弱りが出てくる。腎には温める力 (腎陽) とクールダウンする力 (腎陰) という機能があるが、多くはその両方が弱ってくる。治療に際しては、そのどちらが中心となるかを噛分ける必要がある。

この患者さんは普段、首のコリを感じることが多く、そういう時は腎陰虚が中心となっていると推測できる。陰虚 (熱) は、上に昇りやすく、上半身に症状が出やすいからだ。

今日は下半身の症状。冷えの性質をもつ寒邪・湿邪は、下半身に症状が現れやすい。この治療日までは雨続きで肌寒い。寒邪や湿邪の影響はあるはず。じっとしていると余計に痛いというのも、静止 (陰) が寒湿 (陰) を助長すると考えられる。

●急性の腎陽虚

以上をまとめると、雨続きで寒湿邪の影響を受け、寒湿のもつ冷えの性質が腎陽を圧迫。普段から腎が弱いため、急性の腎陽虚がおこった。痛みそのものは寒湿邪によるもの。これがなくなれば痛みは取れるはず。腎陽を補い、腎を温めることにより、寒湿邪を消す。また、寒湿邪がなくなれば、腎そのものが助かるので、腎陰も回復して、舌のハゲもなくなるはず。

治療…

空間診で左上に出ているので、上半身で腎陽を補える天井 (てんせい) を探る。手掌で軽く触れると応じてくる。効く反応だ。

天井に鍼。そのまま置鍼。

患者さんは相変わらず痛みでもがき、ゴソゴソしている。しかし、患者さんの体質と病因病理のスジミチに確信がある。天井の反応に確たる根拠がある。きっとましになる。

20分置鍼後、
「先生、楽になりました。ああ、どうなることかと思いました。助かりました。」

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