肩こり…東洋医学から見た7つの原因と治療法

ひとくちに肩こりといっても、軽いものから危険なものまで様々です。東洋医学的な病気の捉え方で見ても、その原因は単純ではなく、できるだけ大雑把に分類しても7つの原因があります。これらの分類によって、西洋医学でいうところの頸椎椎間板ヘルニア・胸郭出口症候群・肝臓や心臓疾患からくる肩こりまで、広範な「肩こり」全てに対応できます。

その前に…。
東洋医学は人体をどのように捉えているのでしょうか。
「東洋医学的な鍼灸と一般的な鍼灸…違いが分かる6つの診察法」では東洋医学オリジナルの診察法について説明しています。
「東洋医学の『気』って何だろう」では、東洋医学がなぜ「たとえ」を多用するかについて説明しています。

さて、東洋医学 (=陰陽論) の目で見た肩こりの原因は以下のように分類されます。

≫「陰陽って何だろう」をご参考に。

1. 気滞

気滞とは、気の滞りのことです。気とは機能です。気は陽なので、動き回る性質があります。ここでは、グルグルめぐらせる機能が滞る…と考えてください。めぐりが悪い体質がウィークポイントに症状として出る。これが肩こりです。気滞の原因で一番多いのは、ストレス。次に運動不足。まれに運動のし過ぎで気滞をおこすものもあります。

気滞は緊張とも言えます。緊張は、精神的・肉体的、両方の緊張です。重症度で肩こりを分類すると、気滞による肩こりは、比較的軽い段階のものと言えます。ですので、時に強く感じたり、時に何も感じなかったりします。ストレスで悪化したり、運動すると楽になったりします。

気滞が高じると気逆になります。気は陽なので上に昇る性質があります。だから逆上しやすくなる。こういう肩こりは、のぼせを伴ってきます。

肩は突っ張るような感覚があり、すこし揉んだりシャワーを当てたりすると楽になります。

気滞を取り去る調整法 (瀉法) を行い、治療します。多くは肝臓と関連のあるツボを用います。肝兪・合谷・後渓・百会・行間など。

≫「気滞とは」 (正気と邪気って何だろう) をご参考に。
≫「東洋医学の肝臓って何だろう」をご参考に。

2. 湿痰

湿痰とは水の滞りのことです。ここでいう水とは、栄養分を含んだ水分をいうと考えてください。水はサラサラ流れているから水でいられますが、モタモタしだすと粘ったものに変化します。これを湿痰といいます。モタモタする原因は、過剰な水が体内にあるからです。つまり、食べ過ぎ・飲み過ぎ+運動不足。これらが湿痰を形成します。湿痰は、気 (めぐらせる機能) を阻害し、結果として気滞を生じ、肩こりとなります。

単なる気滞による肩こりよりも、しつこいものが多いです。体を動かしても、なかなか取れません。そのわりにジッとしていると余計に凝ってきます。湿痰は水で陰なので、動かない性質があります。だからしつこくなると考えます。

食べ物は、糖分・油脂分に注意。長い蓄積が湿痰を生みます。

肩は、もちのようなモッチャリ感があり、重だるいような凝り方です。揉んでもらっている間は楽でも、揉むのを止めると、すぐに凝ってきます。

湿痰を取り去る調整法 (瀉法) を行い、治療します。多くは脾臓と関連のあるツボを用います。脾兪・胃兪・豊隆など。

≫「湿痰とは」 (正気と邪気って何だろう) をご参考に。
≫「東洋医学の脾臓って何だろう」をご参考に。

3. 邪熱

気滞が強くなると邪熱に変化します。気滞=緊張。緊張が長く続くと熱を生む。これは自然法則です。空気も圧縮すると熱くなります。地球の深部は引力で高圧・高温です。気は陽なので、熱化しやすいとも言えます。気滞の原因はストレスや運動不足でしたね。これが邪熱を生むわけです。

また、湿痰も邪熱のもとになります。湿痰があれば、流通が悪くなるので、結果的に気滞を生じます。その気滞が邪熱に変化し、湿痰と結びつきます。この状態を湿熱と言います。湿熱は邪熱の一形態です。湿痰は食べ過ぎが原因でしたね。これが邪熱を生むわけです。

つまり、邪熱の原因の元は、ストレスや食べ過ぎということです。

肩は炎症を起こし、冷やすと気持ちよく感じます。逆に温めると悪化します。揉むとかえって悪化します。
邪熱は陽の性質を持つので、火のように上に昇り、肩などの上半身に症状が出やすくなります。

督脈 (背骨に沿ったライン) 上のツボを用いて、邪熱を取り去る調整法 (瀉法) を行い、治療します。邪熱は、気滞や湿痰がこじれて生じたものであるため、難易度が高い調整法となります。

≫「邪熱とは」 (正気と邪気って何だろう) をご参考に。 

4. 瘀血

気滞が長期間いすわると、めぐりの悪さが血を凝結させます。血がモタモタした状態を瘀血と言います。ストレスや運動不足は気滞を生み、その結果、瘀血を生み出すというわけです。瘀血が肩に存在すると、その部分の流通は復活しません。瘀血が気滞を生み、気滞がまた瘀血を生むという悪循環に陥ります。気滞の肩こりみたいにましな時間帯がなくなってきます。

肩には赤や紫の糸状の血管が見られることがあります。瘀血の一部が皮膚にも現われます。血 (物質) は気 (機能=陽) に対して陰の性質をもっており、瘀血の肩こりは、夜中 (陰) に増悪するのが特徴です。これでは疲れが取れず、肩こりも治りません。

血に関わる特殊なツボである三陰交や臨泣などを用いて、瘀血を取り去る調整法 (瀉法) を行い、治療します。瘀血は、気滞がこじれて生じたものであるため、難易度が高い調整法となります。

≫「瘀血とは」 (正気と邪気って何だろう) をご参考に。 

1~4は、互いに関連性があります。「正気と邪気って何だろう」で詳しくまとめてあります。

5. 外邪

昨日まで暖かかったのに急に寒くなった…。連日冷たい雨が続いている…。こういう外部環境の変化 (外邪) で肩こりが起こることがあります。外部環境 (自然気象) は、内部環境 (人体) と密接な繋がりがあります。人間も自然の一部だからです。急激な冷えや湿気が気 (循環機能) を阻害し、気滞を生じ、肩こりが発生します。冷えも湿気も陰の性質を持ち、陽の性質を持つ気を押さえつけます。

気をめぐらして外邪を取り去る治療、湿痰を取り去って湿気の影響を受けなくする治療などがあります。また、外邪を受ける背景には、6.血虚 や 7.腎虚 などの体力の弱りがあることがほとんどで、それらの体力を補う治療も必要です。

≫「外邪って何だろう」をご参考に。 

6. 血虚

心配事などのストレスがひどく、気滞のレベルが強いと、気 (陽) と血 (陰) の平衡関係がくずれ、気を支えていた血が弱ります。これが血虚です。この場合のストレスは「思慮過度」と言われ、考えることが過剰な状態を指します。

スマホ・パソコン・DVDなどで目を使いすぎても血虚が起こります。

気滞による肩こりが慢性化し、それが血を弱らせるほど長期化しても血虚となります。これが症状の中心になると、血虚による肩こりとなります。血虚は気滞を取れにくいものにし、慢性的に肩が凝ります。

体力が弱る背景には血のソースである脾臓の弱り…すなわち消化・吸収・栄養作用の弱りがあります。

ストレス・目の使い過ぎ・運動不足・飲食の不摂生・消化器の弱りなど、複数面から体力を回復させる必要があります。

肩は、筋張って血色がよくありません

「血」という体力を補う調整法 (補法) を行い、治療します。肝臓・脾臓に関連のあるツボを用います。肝兪・  脾兪・太衝・三陰交・血海・公孫など。

≫「東洋医学の血って何だろう」をご参考に
≫「東洋医学の肝臓って何だろう」をご参考に。
≫「東洋医学の脾臓って何だろう」をご参考に。

7. 腎虚

腎虚とは、「下の弱り」です。下 (下半身=陰) が弱ると、上 (上半身=陽) が強くなりすぎます。簡単なたとえで説明すると、上半身が満員電車の状態、下半身はガラガラの状態。上はぎゅうぎゅう詰めで、気滞が発生し、肩が凝ります。その原因が、下の弱りというわけです。

下が弱る原因は、老化・生まれつき体が弱い・セックスのし過ぎ・無理のし過ぎ。また、上記の1~6に列挙した肩こりの原因は、最終的には全て腎臓に負担をかけ、腎虚の原因になります。

下の弱りがあるので、足腰のだるさや無力感が出てきます。

加えて、足の冷えがあったり、足のほてりがあったりします。東洋医学の腎臓は、火 (陽) と水 (陰) というエッセンスの根源と言われます。ですから、腎臓が弱る (=腎虚) と、冷えるタイプの人 (陰=腎陽虚) と、熱くなるタイプの人 (陽=腎陰虚) に分けられます。足が冷える人もいれば、足が火照る人もいるのは、そういう理由です。

治療は主に、腎陰虚か腎陽虚かを噛分けたうえで、腎臓という体力を補う調整法 (補法) を行います。腎兪・陰谷・復溜・照海・天井など。ただし、単純に腎を補えばいいというものではなく、1~6すべて臨機応変に用いる必要があります。

≫「東洋医学の腎臓って何だろう」をご参考に。

以上、7つの原因に 大きくまとめました。専門家は、もっと細かい分類を把握しています。また、7つの原因は単独で肩こりを起こす場合もあれば、複数が重なって起こす場合もあります。ただ単に、肩をもんだり、肩に鍼をしたりすれば治る、という発想ではないということが分かります。循環機能の衰えがなぜ起こるか…という観点で、機能的・内科的にフォーカスする必要があります。

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