腰痛…東洋医学から見た6つの原因と治療法

西洋医学的に、腰痛といえば、椎間板ヘルニア・脊椎間狭窄症・すべり症なども含まれますし、単に、筋肉の緊張による腰痛もあります。

東洋医学的には、それとは見る角度が異なります。腰に意識を払いつつも、全身の血流を正常化し、免疫力を最大限に引き出すことに主眼とします。そうすることで、自然治癒に導きます。ですから、骨や神経がどうなっているかは、一応参考にはしますが、診断治療にはあまり関係ありません。

頼りない、とお感じでしょうか? そんなことはありません。

たとえば、ヘルニアは腰椎と腰椎の間の軟骨の一部がプチュッと飛び出し、それが軽く神経に触れることで激痛が生じます。一昔前は、この飛び出した組織を手術で取り去らないと治らないと考えられていました。ところが近年の研究で、手術で取らなくとも、免疫細胞がうまく働けば、飛び出した組織を食べてくれる、椎間板ヘルニアは自然治癒する、ということが分かっています。体の回復力って、すごいですね。

軟骨が飛び出していることを、最新の技術で鮮明な画像にし、椎間板ヘルニアだという診断を下す。それはそれで大切なことなんですが、それをやったところで、血流や免疫が改善するわけではありません。免疫・血流を無視し、痛み止めに終始するなどは言語道断です。実は、この血流・免疫こそ、東洋医学が基礎とする「機能=気」であり、東洋医学が最も得意とする分野です。西洋医学の基礎は「物質」であり、手術は得意ですが機能の調整は不得意です。

東洋医学は機能を基礎とする医学です。詳しくは下記をご参考に。
「東洋医学的な鍼灸と一般的な鍼灸…違いが分かる6つの診察法」

痛み止めを乱用するのは体によくありません。詳しくは下記をご参考に。
スポーツ鍼灸と東洋医学的鍼灸…長所と短所ここが違う

東洋医学は、なぜ「たとえ」を多用するのでしょうか。詳しくはこちらをぞうぞ。
東洋医学の『気』って何だろう

さて、東洋医学 (=陰陽論) では腰痛の原因をどのように捉えて治療しているのでしょうか。東洋医学的な病気の捉え方で見たとき、その原因は単純ではないことが分かります。できるだけ大雑把に分類しても7つの原因があります。

1. 気滞

気滞とは、気の滞りのことです。気とは機能です。気は陽なので、動き回る性質がありますが、それが停滞する。つまり、グルグルめぐらせる機能が滞る…と考えてください。めぐりが悪い体質がウィークポイントに症状として出る。そのウィークポイントが腰なら、腰痛が起こります。気滞の原因で一番多いのは、ストレス。次に運動不足。まれに運動のし過ぎで気滞をおこすものもあります。

気滞は緊張とも言えます。緊張は、精神的・肉体的、両方の緊張です。重症度で腰痛を分類すると、気滞による腰痛は、比較的軽い段階のものと言えます。ですので、時に強く感じたり、時に何も感じなかったりします。ストレスで悪化したり、運動すると楽になったりします。

腰は突っ張るような痛みがあります。同じ個所が痛いとは限らす、左右・上下と移動します。すこし揉んだりシャワーを当てたりすると楽になります。

気滞を取り去る調整法 (瀉法) を行い、治療します。多くは肝臓と関連のあるツボを用います。肝兪・合谷・後渓・百会・行間など。

≫「気滞とは」 (正気と邪気って何だろう) をご参考に。
≫「東洋医学の肝臓って何だろう」をご参考に。

気滞によるギックリ腰

気滞腰痛は、腰を少し捻ったなど、程度の軽いギックリ腰でも見られます。後渓を用います。ギックリ腰は、体質的にもともと気滞があるところに、たまたま腰に不自然な負荷が加わることが引き金となって発症します。ですから、普段から気滞を取るように治療していれば、予防できます。

 

2. 湿痰

湿痰とは水 (ここでいう水とは、栄養分を含んだ水分のことです) の滞りのこと。それが、どこかでモタモタしだすと粘ったものに変化します。これを湿痰といいます。モタモタする原因は、過剰な水が体内にあるから。つまり、食べ過ぎ・飲み過ぎ+運動不足が湿痰を形成します。これが気 (めぐらせる機能) を阻害し、結果として気滞を生じ、腰痛となります。
単なる気滞による腰痛よりも、しつこいものが多いです。湿痰は水で陰なので、動かない性質があります。だからしつこくなると考えます。

食べ物は、糖分・油脂分の摂り過ぎに注意。長い蓄積が湿痰を生みます。

重だるい痛みが特徴。痛む部分は一か所にあって、気滞の腰痛のように動きません。湿痰は動きにくいのです。いつも決まった場所がつらく、揉んでも取れにくい腰痛です。

湿痰を取り去る調整法 (瀉法) を行い、治療します。多くは脾臓と関連のあるツボを用います。脾兪・胃兪・豊隆など。

≫「湿痰とは」 (正気と邪気って何だろう) をご参考に。
≫「東洋医学の脾臓って何だろう」をご参考に。

3. 瘀血

気滞のレベルがきついと、めぐりの悪さが血を凝結させます。血がモタモタし状態を瘀血と言います。ストレスや運動不足は気滞を生み、その結果、瘀血を生み出すというわけです。瘀血が腰に存在すると、その部分の流通は復活しません。瘀血が気滞を生み、気滞がまた瘀血を生むという悪循環に陥ります。気滞の腰痛みたいにましな時間帯がなくなってきます。

血 (物質) は気 (機能=陽) に対して陰の性質をもっており、瘀血の腰痛は、夜中 (陰) に増悪するのが特徴です。これでは疲れが取れず、腰痛も治りません。

血に関わる特殊なツボである三陰交や臨泣などを用いて、瘀血を取り去る調整法 (瀉法) を行い、治療します。瘀血は、気滞がこじれて生じたものであるため、難易度が高い調整法となります。

≫「瘀血とは」 (正気と邪気って何だろう) をご参考に。 

瘀血によるギックリ腰

瘀血は通常、気滞が慢性化して生じるもので、除去には時間がかかります。しかし、急性の瘀血腰痛もあって、重症のギックリ腰で見られます。この瘀血は急性なので、比較的早期に除去が可能です。ギックリ腰は、体質的にもともと気滞があるところに、たまたま腰に不自然な負荷が加わることが引き金となって発症しますが、気滞が強いと、血の滞り (瘀血) も生じます。瘀血を取れば、腰が流通しだし、気滞も取れます。この場合、臨泣を用います。

 

1~4は、互いに関連性があります。「正気と邪気って何だろう」で詳しくまとめてあります。

4. 外邪

腰痛に悩んでいる方で、天候に左右されやすいと感じている方は多いのではないでしょうか? 連日冷たい雨が続いている…。梅雨で蒸し暑い日が続いている…。こういう外部環境の変化を外邪を外邪といいます。腰痛の場合、特に冷えや湿気で痛みが起こることがあります。

外部環境 (自然気象) は、内部環境 (人体) と密接な繋がりがあります。人間という動物は、他の動植物と等しく自然の一部だからです。

➀寒湿型 (冷たい雨が続いたときに悪化)

急激な冷えや湿気が気 (循環機能) を阻害し、気滞を生じ、腰痛が発生します。冷えも湿気も陰の性質を持ち、陽の性質を持つ気のめぐらせる機能を押さえつけます。おなじ0℃でも、水だと冷たいですが、空気だとそうでもないですね。湿は冷えの凝結させる力を倍増させるのです。

腰が冷えて重い。横になってもましになりません。これは寒も湿も陰の性質をもつので、横になって静かにすること (陰) が陰を助長するからです。また、寒湿の外邪を受けてしまうということ自体、気 (温める機能) が不足している証拠で、気が不足すると、体を動かす機能も不足します。ですから朝起きても腰だけでなく全身が重く、スッキリしません。ただし、温めるとましになります。

身体を温めるツボを使いながら、寒湿の外邪をとる治療を行います。足三里・胞肓・復溜・腎兪・外関など。

②湿熱型 (梅雨などの蒸し暑い時期に悪化)

蒸し暑さ (熱+湿) も気 (循環機能) を阻害します。熱は患部の体液 (陰) を損傷し、陰の支えを失った陽 (気) はめぐらせるという正しい機能を発揮できず、かわりに炎症を起こすという誤った反応を呈します。そこに湿が加わると、熱は破壊力を増します。同じ100℃でも熱湯は大やけどになりますが、サウナだとやけどをしませんね。こうして、しつこく激痛を伴う腰痛となります。湿は陰で重濁の性質を持つため下降しやすく、下半身の枢要である腰に病変を起こします。

湿の重い痛みに、熱の激しさが加わるので、痛みは強い。熱い感覚を伴う激痛。熱に煎じ詰められ、小便の色が濃くなります。暑い日に悪化するのはこのタイプ。

熱を取りながら湿をさばきます。治療がよく効くと、小便がよく出て、体が軽くなり、痛みが和らぎます。督脈 (背骨のライン) の上にあるツボを用いて熱を取り去り、陰陵泉・公孫などを用いて湿を尿に変えて取り除く治療を用います。

外邪を受ける背景には、6.血虚 や 7.腎虚 などの体力の弱りがあることがほとんどで、それらの体力を補う治療も必要です。

≫「外邪って何だろう」をご参考に。 

5.脾虚

脾臓とは、西洋医学でいうところの脾臓ではありません。脾臓…消化・吸収・栄養作用をまとめて脾臓と言います…が衰えることを脾虚と言います。脾臓は、だいたい消化器全般をイメージしていただければいいのですが、消化器ということなら、消化・吸収作用は理解できるのですが、栄養作用 (全身の細胞に栄養を送り届ける作用) まで含むとなると、ずいぶん概念が大きいですね。

この、送り届ける作用のことを「運化」と言います。運化は、気の持つ「めぐらせる機能」と重複します。つまり、脾臓は気 (機能) を作る、とも言えます。そんな脾臓が弱ると、栄養分を含んだ水分はめぐらなくなり、モタモタすると湿痰に変化します。それが腰痛になるのです。湿痰がどのようにして腰痛をおこすかは、2.湿痰を参考にしてください。

ただし、この湿痰は脾臓の弱りから生じたもの。食べすぎから生じたものではないので取り去る治療ができません。脾臓を補う治療をします。そうすることで運化が強くなり、気のめぐらせる作用がアップします。結果として湿痰が取り除かれます。

脾虚の人は気が不足し、元気がありません。腰は常に重だるく、全身だるくて動く気になれません。動かないので、ますます体力がなくなるという悪循環があります。

脾臓という体力を補う調整法 (補法) を行い、治療します。脾臓に関連のあるツボを用います脾兪・胃兪・中脘・太白・三里など。

詳しくは下記をご参考に。
「東洋医学の脾臓って何だろう」

東洋医学の脾臓は、西洋医学のでは脾臓ではありません。詳しくは下記をご参考に。「五臓六腑って何だろう」

6. 腎虚

腎虚とは、「下の弱り」です。下 (下半身=陰) が弱ると、気のめぐらせる力そのものが弱っているわけですから、下半身の枢要である腰に症状が出やすくなります。腰全体がだるく、ひどい場合は足腰に力が入りません。下が弱る原因は、老化・生まれつき体が弱い・セックスのし過ぎ・無理のし過ぎ。また、上記の1~5に列挙した腰痛の原因は、最終的には全て腎臓に負担をかけ、腎虚の原因になります。

また、足の冷えがあったり、足のほてりがあったりします。東洋医学の腎臓は、火 (陽) と水 (陰) というエッセンスの根源と言われます。ですから、腎臓が弱る (=腎虚) と、冷えタイプの人 (陰=腎陽虚) と、熱タイプの人 (陽=腎陰虚) に分けられます。足が冷える人もいれば、足が火照る人もいるのは、そういう理由です。

腎虚の治療は主に、腎陰虚か腎陽虚かを噛分けたうえで、腎臓という体力を補う調整法 (補法) を行います。腎兪・陰谷・復溜・照海・天井など。ただし、単純に腎を補えばいいというものではなく、1~5すべて臨機応変に用いる必要があります。

実は、1~5に挙げた各種腰痛は、バックに6.腎虚が隠れています。先ほども言うように、腎虚とは下の弱り。下が弱いから、下半身の枢要である「腰」に病変が出ます。腰痛の原因は一つではなく、複数ある。だだ、それら相互の比率が違うため、比率の大きい病因によって、1~6の分類をしている、ということです。

例えば、腰が重い、だるい、力が入らない…という腰痛があったとします。2.湿痰も考えられるし、6.腎虚も考えられる。 他の所見も詳しく分析して、腎虚>湿痰という診断が下れば、腎虚腰痛となります。ただし、腎虚の治療をしているうちに、湿痰>腎虚になる日が来ます。すると、湿痰腰痛と診断が変わり、湿痰を取り去ることが治療の主眼になります。

≫「東洋医学の腎臓って何だろう」をご参考に。

以上、6つの原因に 大きくまとめました。専門家は、もっと細かい分類を把握しています。また、6つの原因は単独で腰痛を起こす場合もあれば、複数が重なって起こす場合もあります。ただ単に、手術をしたり、腰に鍼をしたり、湿布をはったりすれば治る、という発想ではないということが分かります。循環機能の衰えがなぜ起こるか…という観点で、機能的・内科的にフォーカスする必要があります。

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