ステロイドで迷ったら…東洋医学的見地から…

やめた方がいいのか、使った方がいいのか。いろんな意見が飛び交うステロイド。われわれは、これと、どう付き合っていくべきなのか。普段とは、少し違う角度から見てみましょう。まず、ステロイドが処方されることの多いアレルギー疾患から考えていきます。

アレルギーって何?

ウイルスや細菌は人体に有害ですよね。これらがノドに入ると、排除するために、激しく咳き込んだり、くしゃみが出たりします。排除するかしないかを決めるのは免疫です。一方、花粉やハウスダストは人体に無害です。なので、ノドに入っても、免疫は排除しようとしません。それが正常。ところが、この無害な花粉やハウスダストを有害と勘違いして排除する。意味もなく、激しく咳き込み、くしゃみが出る。このように、免疫が狂って勘違いを起こした状態をアレルギーといいます。

原因が分からない

免疫がなぜ狂うのか、原因は分かっていません。原因が分からないほど複雑、ということです。これが実際の臨床となると、もっと複雑です。例えば、喘息という病気があります。何らかの原因で気管や気管支に炎症をおこし、それが慢性化したものをいいます。原因はウイルスや細菌の感染、アレルギー反応などが引き金になると言われます。細菌は鼻水などを取って培養すれば調べることができますが、ウイルスは調べ様がありません。カゼのほとんどはウイルスが原因ですから、感染かアレルギーかを見分けるだけでも至難の業です。

機序が複雑すぎて、よく分かっていないと言われるのは、こういう問題があります。この、「よく分かっていない」というのがポイント。我々が困っている病気は、ほとんどが原因不詳です。なぜ、よく分からないのでしょう。物質的側面よりも、機能的側面の方がウェイトが大きい病気を、西洋医学は苦手としています。喘息はアレルギーと関わりが深く、アレルギーは免疫と関わります。免疫は…。

免疫って何?

著名な免疫学者、多田富雄先生によると、免疫は、現代医学的に謎だらけだそうです。考えてみたら、免疫細胞って不思議ですよね。一つ一つの細胞が、まるで自分の意思を持っているかのような動き方をします。初めて出合った相手 (細菌) に対して、敵だ! と判断して攻撃する。こういう細胞は他にはあまりないと思います。思いつくのは精子くらいでしょうか。そういう「自分」を持った免疫細胞のネットワークである免疫系。実はそれを仕切るトップが、何なのか分からないそうです。例えば脈管系なら心臓というトップがいますね。神経系なら脳がある。免疫系にも、それを統率する中枢があるはずなのですが、それが何と見つかっていません。免疫は、人智を超えたネットワークなのです。

だから免疫が狂っても治し方が分からない。だから対症療法に終始する。ステロイドです。免疫に関わる病気 (アレルギー・膠原病) は治りにくく、ステロイドを処方されることが多いのは、そういう事情があります。免疫は、ステロイドの問題を解くうえでキーワードになりますので、記憶にとどめておいてください。

※多田富雄「免疫の意味論」青土社1993

ステロイドって何?

ステロイドとは何でしょう。ステロイドは、副腎皮質ホルモンとも言われます。人間の体で作る大切なホルモンの一つ。腎臓の上に位置する副腎という器官で作られていて、炎症を鎮める作用があります。そのホルモンを人工的に作った薬も「ステロイド」と呼ばれ、病院で処方されています。アレルギーや膠原病などの免疫疾患は、免疫が狂い暴走した結果、組織の炎症を引き起こします。花粉症で鼻がムズムズしたり、喘息でノドが脹れたり、アトピーで皮膚が真っ赤になったり、リウマチで関節が腫れ上がったするのが炎症です。それら炎症を鎮める際に、ステロイドは劇的に効きます。

ところが、このステロイド、いいイメージがありません。副作用があるというのが一つの理由です。ステロイドにはどんな副作用があるのでしょう。これは、非常に項目が多いです。ウィキペディアの「ステロイド系抗炎症薬の副作用」をご覧ください。

ステロイドの副作用は多岐に渡っており、裏を返せば、副腎皮質ホルモンが、いかに生命維持のために幅広い機能を持っているか、ということが伺い知れます。また、列挙された副作用に目を通すと、副腎皮質ホルモンがでたらめな作用の仕方をしている姿が見えてきます。外から人為的にホルモンを足すということは、メリットもあれば、やはりデメリットもあるようです。

ステロイドは援助

本来、ステロイドは、自分の体で自前で作るべきものです。それを、よそから援助してもらうというのは、自前の働きがサボってしまう、という見方ができます。たとえば、楽だからと言って車ばかり乗って歩かないでいると、足腰が弱ってしまいますね。楽だからと言ってステロイドばかり使っていると、副腎が弱ってしまうという考え方ができます。ステロイドが良くないと言われる理由の一つです。

ただし、足腰の弱った人に、無理やり歩かせても、かえって足を痛めてしまいます。ステロイドの使用を我慢するのは良くないと言われる理由がよく分かります。車は必要な分だけ使用し、必要以上に使わない、そういう「サジ加減」があれば、足腰は力を取り戻していきます。ただし、そのサジ加減がどの程度なのか。患者さんの言いなりになってはならないことは確かです。

ステロイドは武器

こんな考え方もできます。ステロイドは「武器」という考え方。国会でも安保法案でもめていますが、軍隊派遣が安全とか危険とか、そういう問題を議論しても埒 (らち) があきません。軍隊そのものは存在しても、それを使わなくてもいい平和な世の中にするには何が大切なんだろう。そういうことを、議論の目的として見据えていなくてはなりません。武器がステロイドなら、平和こそ健康と言えないでしょうか。健康でありさえすれば、ステロイドは必要ありません。ただし、有事の際には、いつでも使えるようにしておくべきです。

ステロイドは論点ではない

ステロイドは安全だというのも間違っていますし、ダメだというのも的外れです。いちばん大切な視点が見逃されています。それは、自前でステロイドを十分に作れる体になる、あるいは、自前のステロイドを無駄遣いしないような体になることです。この観点が西洋医学に欠落しているのは、その方法がないからです。その方法がないから、アレルギーの増加を防げなかったり、副作用の問題が出たりするのです。

健康は物質ではない

なぜ方法がないのでしょう? それには、ちゃんとした理由があります。それを知るには、西洋医学が何を基礎としているかという問題。それから、健康とは何なのかという問題。これらを整理する必要があります。西洋医学が基礎とするのは「物質」。ところが、健康は物質ではありません。薬を飲むことが健康法だ、という人は少ないですよね。その理由は、機能的側面である健康に、物質的アプローチは届きにくい、という現実があります。

健康は機能

東洋医学のフィルターを通すと、ステロイドはどのように見えてくるでしょう。まず、東洋医学は機能科学です。これは西洋医学の物質科学とは視点が大きく違います。機能とは「気」のこと。機能という言葉は古代にはなかったので、古代人は「気」と表現しました。西洋医学が物質 (モノ) を基礎として理論を積み上げ高めてきたのに対して、東洋医学は機能 (ハタラキ) を基礎として理論を高めてきました。先ほどの「武器」「平和」という考え方にしても、武器は物質ですが、平和は機能です。物質ではありません。西洋医学が「ステロイド」という物質に依存し、東洋医学が「健康」という機能にこだわる理由が、垣間見える様です。

東洋医学と西洋医学とでは、基礎とするものが違います。東洋医学が基礎とする「機能」は非常に認識が難しい概念です。
詳しくは下記をご参考に。
≫「東洋医学的な鍼灸と一般的な鍼灸…違いが分かる6つの診察法」
≫「東洋医学の気って何だろう」

東洋医学の分析

ステロイドの主な作用は、消炎作用です。炎症を抑える働きですね。炎症を抑える働きは、自前でもっている働きだと、先ほど言いました。その自前の働きを、東洋医学では「腎陰」といいます。腎陰とは、体力 (生命力) の一側面であり横顔と言えます。体力は物質ではありません。体力は機能であり、健康の必須要素です。腎陰は非常に重要な体力です。東洋医学では、喘息やアトピー性皮膚炎・膠原病を治す際、いろいろな手段をとりますが、結果的に腎陰という体力を補うことを主眼にします。

腎陰って何?

腎陰について、もう少し説明しましょう。腎陰とは、腎の陰、ということ。そもそも「腎」とは、生まれつき持っている体力のこと。食事摂取から得られる体力とは異なる重要部門であり、生命誕生の不思議にもかかわる命の根源で、もって生まれた寿命と関わりがあります。「陰」とは、身体をクールダウンする働き。我々は活動と休息 (睡眠) を繰り返すことで生命を維持しています。活動はヒートアップで陽、休息はクールダウンで陰です。腎という体力の中には、陽というヒートアップする働き (腎陽) と、陰というクールダウンする働き (腎陰) があります。

≫「東洋医学の腎臓って何だろう」をご参考に。

アレルギーは腎陰不足

陰が足らず、陽が勝ちすぎるのが、免疫の暴走の正体であり、アレルギーで起こる炎症です。だから、アトピーも痒くて掻きつづけ (動きつづけ) 、落ち着きません。喘息も起座呼吸するなど落ち着きがありません。落ち着かないというのは陽が勝っている状態。腎陰を補うことができれば、炎症はクールダウンされ、落ち着いていられるようになり、夜もよく休めます。陰という機能を補うことができたからです。

東洋医学の目で見た腎陰不足という状態は、ステロイドでは治りません。体力は薬では補えないからです。

つまり、ステロイドは…

例えば、お金がない。だから生活が苦しい。解決方法は、働くこと、使わないこと。でも、それよりもっと手早い方法がある。借金です。その場はそれでしのげるので、ついつい借金に頼る。気が付けば、もっと窮地に立たされている…。体力 (腎陰) を「お金」と考えると、ステロイドは借金です。借入金は世の中に必要。しかし、使い方を間違うと、とんでもないことになる。あくまでも、自前のお金を増やすがための借金。そういう使い方ができれば、借金はむしろ有用です。

お金は物質ではなく機能です。機能を分かりやすく説明できます。詳しくは下記をご参考に。
お金と「気
腎に貯金を!
体の経営コンサルタント

余談ですが、いろいろな比喩を使っていますね。ステロイドを武器や借金にたとえました。健康を平和やお金にたとえました。たとえが多いです。そう、それが東洋医学の特徴です。機能は、物質と違って、考察するのが非常に難しい。だからたとえを多用するんです。こんなふうだよ、という方が、機能を理解しやすいからです。

なぜ負の連鎖

ステロイドで病気を治したら糖尿病になった、骨が折れた、血圧が高くなった、体が弱くなった…。これら副作用は、すべてステロイドの使い方を誤り、体力をつけて健康になるという道筋から外れてしまった人に起こるのではないでしょうか。副作用はさまざまありますが、東洋医学的にこれらを俯瞰したとき、腎陰 (天賦の寿命&クールダウン機能) の衰えが進行している状態、としてまとめることができます。

機能を診ることこそ重要

ステロイドを必要とする病気…アレルギー疾患や膠原病などの免疫疾患は、様々な要因から、結果として、クールダウンする機能が弱った状態です。様々な要因とは何でしょう。これは物質という視点からは見えてきません。物質と相対する概念、「機能」という視点から光を当てたとき、何を排除し、何を取り入れるべきかが見えてきます。それは、発病と治癒の原動力である「免疫」そのものが、物質ではなく機能だからです。

※「結果的に」腎陰を補うのであって、臨床では、短略的に腎陰を補うツボや漢方薬を使うことはほとんどない。腎陰を弱らせる要素を特定し、それを解決する方法をとる場合が多い。腎陰は機能なので、物質的アプローチとは、扱い方が異なる。東洋医学的に見たアレルギーの原因や治療法については「喘息…東洋医学から見た3つの分類と治療法」をご参考に。

コメント

テキストのコピーはできません。
タイトルとURLをコピーしました