頭痛…東洋医学から見た5つの原因と治療法

一般的に、頭痛の治療といえば、痛み止めの薬が浮かびます。

ご一読いただきたいのは、高須俊明先生の「頭痛」 (岩波新書1983) です。先生は医師の立場から、頭痛薬に対する批判を展開されています。

その中で、「幸い、頭痛薬というものは、それほど劇的には効かないことが多い。このためわれわれの社会は二重三重の自壊を免れているのだ。」として、頭痛薬が劇的に効けば、身体に大きな混乱が起こると予言されています。その理由として、「頭痛はアラーム」としての役割があることを説明、頭痛薬に頼らず「無理のない余裕のある生活をせよ」との訓戒を述べておられます。

頭痛は「ブレーキ」

ぼく流に分かりやすくしてみます。たとえば徹夜マージャンが連夜に及んだ。それで頭痛が出たので、医者に診てもらう。医者は気前よく痛み止めを出す。痛みが止まったので、今夜もマージャンをする。

この医者は良くない医者です。「なぜ頭痛が起こったか」くらいは聞かなくてはなりません。いい医者ならば、痛み止めを出さずに、「マージャンが原因かもしれないから今夜は早くおやすみなさい。それでもましにならなかったら明日またおいで。」と指導するでしょう。人を育てるのも医者の仕事です。

痛みは、必要なものなので、単純に止めてはなりません。痛みは信号です。ブレーキです。痛みの原因がなくなり不必要になれば、痛みは自ずと消え去ります。それが本当の治療であり、東洋医学はその手段の一つです。

東洋医学は頭痛をどのように見て、治療するのでしょうか。脳梗塞や脳腫瘍との関連性も必見です。

その前に…。
東洋医学は人体をどのように捉えているのでしょうか。
「東洋医学的な鍼灸と一般的な鍼灸…違いが分かる6つの診察法」では東洋医学オリジナルの診察法について説明しています。
「東洋医学の『気』って何だろう」では、東洋医学がなぜ「たとえ」を多用するかについて説明しています。

頭痛にいたるストーリー

毎日生活していると、いろいろなことがありますね。少し無理してでも、やってしまわなければならない、そういう状況は、誰にでも起こり得ることです。そこで我々は「火事場の馬鹿力」を出します。

何とかしなければ…という強い気持ちは、時に疲れを感じなくさせます。実は、この時こそ疲れが蓄積している時なのです。

そういう状況はやがて収まり、ゆったりした日常に戻ります。健康であれば、眠さが出て、早く床に着き熟睡し、疲れは取れてしまいます。不健康であれば、頭痛などの症状が出て、休まざるを得ない状況になります。体がわざとそうしているのです。

もっと不健康であれは興奮状態から覚めることなく、ゆったりした日常でさえ気ぜわしく動いてしまいます。疲れは取れることがないのです。

火事場の馬鹿力が出ているときは、興奮状態です。だから、もてる体力以上の仕事ができます。しかしこれでは、仕事量が大きくなればなるほど、「もてる体力」は減少してしまいます。体力が減少すればするほど、興奮状態を制御する力 (陰) が減少し、興奮状態 (陽亢) を制御できなくなります。≫陰の減少 (陰虚) >興奮状態 (陽亢)  のときは、陰虚を治療します。陽亢>陰虚のときは陽亢を治療します。

悪循環がこのまま行くと、生命が危うくなります。そこで体は急ブレーキをかけます。頭痛です。興奮状態 (陽亢) はその一部あるいは全部が、痛み (気滞) に姿を変えるのです。陽亢>気滞 のときは、陽亢を治療します。気滞>陽亢 のときは、気滞を治療します。

痛み (気滞) を多年に渡って繰り返すと、気の滞りが血の滞り (瘀血) となり、つまり滞りが頑固なものとなります。≫瘀血>気滞のときは、瘀血を治療します。

我々はこの興奮状態を、美食で鎮静化しようとすることもあります。食べると落ち着く。しかしこれは落ち着いたのではありません。火事場の馬鹿力が「やけ食い」に置き換わっただけです。または、「食べ過ぎ」 (湿痰) という代償をはらって「見せかけの陰」を得ているにすぎません。やがて湿痰によって痛みが出て、興奮状態を鎮静化しようとします。≫湿痰>陽亢のときは、湿痰を治療します。陽亢>湿痰のときは、陽亢を治療します。

興奮状態はつらさを感じません。この興奮状態の中、寒さ暑さの変化を感じにくくなって、気候変動 (外邪) にやられやすくなることもあります。外邪にやられることで痛みが出て、結果として興奮状態は沈静化しようとします。≫外邪>陽亢のときは、外邪を治療します。陽亢>外邪のときは、陽亢を治療します。

以上をもとにして、気逆・邪熱・陰虚陽亢・湿痰・瘀血・気血両虚・外邪について、詳しく見ていきます。

1.陰虚陽亢

陰虚陽亢とは、陰虚と陽亢が同時に存在する病態です。

(1) 陽亢とは

陽亢とは、陽 (気) の高ぶりです。

陽 (気) とは、上のことであり、拡散力であり、同時に活動力 (ヒートアップする力) のことです。

陰とは、下のことであり、収縮力であり、同時に沈静力 (クールダウンする力) のことです。

陽亢はどのようにして起こるのでしょうか。

気滞から気逆へ

まず、ストレス・運動不足があるとします。すると、気 (活動力) が潤滑に動かなくなり、停滞します。これを気滞と言います

気滞が長期化したり強度であると、下 () に負担がかかり、下が相対的に弱まり、収縮力が弱ります。いっぽう気は陽の性質を持っているので、上に昇ろうとします。この結果、上下のバランスを失い、気の上昇が起こります。上がギュウギュウ詰めで、相対的に下がガラガラになります。これを気逆といい、その結果、頭痛となります。気逆は陽亢の一つの側面である理解してください。

生まれたときから下が相対的にガラガラで弱い場合があります。その場合は上が相対的にギュウギュウになるため、ストレスがなくとも気滞を生じることがあります。子供の頭痛はほとんどがこれです。

 

気のめぐりはそもそも、腎が元締めです。腎は肝を支えており、脾を支えており、肺を支えているからです。肝は疏泄・脾は運化・肺は宣発と粛降によって、気を巡らせています。気滞が取れないと、最終的に腎に負担をかけます。

気逆から邪熱へ

ギュウギュウになった上は、ひどくなると熱を持ちます。これを邪熱と言います。邪熱は明らかに熱の性質を持っているので、上に昇ろうとします。その結果、頭痛となります。

邪熱は気を焼く強烈さがあるので、頭痛も突然激痛がおこるような激しさがあります。顔が真っ赤になることもあります。邪熱は陽亢の一つの側面であると理解してください。

陰虚陽亢とは

気逆も邪熱も、下にいくらかの負担をかけてはいますが、あくまでも上の問題です。上にある気逆・邪熱だけを狙って除去すればよい。そうすれば下の問題は勝手になくなります。

しかし、上は上 (実) 、下は下 (虚) で問題が出だすと、上の実を除去しつつ、下の虚も強くしなければなりません。この状態を陰虚陽亢といい、単に陽亢とも言います。

上がギュウギュウ詰めになればなるほど、下はガラガラになります。下のガラガラ状態を陰虚といいます。下がガラガラ状態になればなるほど、上に昇ろうとします。陽亢は陰虚をひどくし、陰虚は陽亢をひどくします。

(2) 陰虚とは

陰虚とは、陰の弱りです。

陰とは、下のことであり、収縮力であり、同時に沈静力 (クールダウンする力) のことです。収縮するための求心力がなくなると、遠心力が勝って気がすべて飛び散ってしまいます。これが寿命です。

 

無理のし過ぎ・夜更かし・老化・セックスのし過ぎは、陰虚の原因となります。また、ストレスがひどく、気滞のレベルが強いと、下に負担をかけて陰が弱ります。

下の陰は、沈静化してクールダウンする力でしたね。そして収縮力でした。引力のようなものです。これが弱ると、もともと生命力として存在する気をつなぎとめておけず、気が上に昇ってしまいます。上に昇って上がギュウギュウになった結果、頭痛となります。顔が赤くなったり、のぼせを伴ったりします。

陰虚が原因で陽亢が起こっているので、陰虚を治療すれば勝手に陽亢は収まります。

五心煩熱

陰虚証の症状として「五心煩熱」があります。陰虚が起こると、収縮力が不足し、頭部だけでなく、手足にも気が拡散することにより、「手足がほてる」という症状が起こります。お年寄りでよく見られるこの証候は、この病理によります。胸のあたりにも落ち着かない熱感が起こりますが、これは腎陰が心陽を制御できないで起こる証候です。

 

陰虚が中心の頭痛であっても、陽亢が中心の頭痛であっても、共通する病理があります。いずれも陽亢があって、それで頭部に気が集まると、顔が赤くなり、のぼせ、陽亢につながります。陽亢は上で行き止まりとなって気滞を起こし、不通となって頭痛が起こる…ということです。

精血不足の頭痛

陰虚が進んで精血不足になると、空虚な感じのする頭痛となります。これもやはり残存する陽気に見合った陽亢があり、それで頭部に気が集まると、気滞を起こして「めぐらせる力」が阻害され、不通となって頭痛となります。

 

(3) 陰虚陽亢の治療

陽亢と陰虚は陰陽関係です。

陽亢と陰虚がシーソー関係を保っている場合は軽症です。陽亢がひどくなると、陰がそれを食い止めようとします。陽亢 (邪熱や気逆) を取り去ると、陰虚は勝手に良くなります。≫陽亢>陰虚。陰虚がひどくなると、陽がでしゃばらずに陰の回復を待ちます。陰を補うと、陽亢は勝手に落ち着きます。≫陰虚>陽亢。

陽亢と陰虚が釣り合うと重症です。一方がひどくなると、もう一方もひどくなる。相反する関係でありながら、悪い意味で、お互いがお互いを助け合う関係になってしまいます。≫陽亢=陰虚。

  (ア) 陽亢>陰虚

陽亢>陰虚なら、気逆や邪熱を取り去る治療を行います。肝臓に由来するツボを用います。百会・合谷・後渓・行間など。

≫「東洋医学の肝臓って何だろう」をご参考に。

  (イ) 陰虚>陽亢

陰虚>陽亢なら、陰虚を補う治療を行います。腎臓に由来するツボを用います。照海・大巨・関元・陰谷など。

≫「東洋医学の腎臓って何だろう」をご参考に。

  (ウ) 陽亢=陰虚

陽亢=陰虚なら、シーソーの両端に負担がかかっているにもかかわらず、シーソーは傾きません。もし、陽亢も陰虚も度合いが強い場合は、その負荷が大きくかかっており、シーソーそのものが破綻寸前となります。極端になっていますので、脳梗塞に発展する可能性もあります。

陽亢が激しいので、本人は陰虚による体力の弱りあるのに、それをほとんど自覚できません。脳梗塞を起こす前夜とはそういうものです。治療は慎重かつ大胆に行います。高度な技術が必要です。

シーソーが本来の働きであるシーソー運動を失うということは、何か大きな矛盾があるというべきです。頭痛薬はその矛盾を演出する原因の一つです。薬で「頭が痛い」というブレーキを効かなくするわけですから、陽 (活動・ヒートアップ) の高ぶりが止まりません。

ブレーキが必要な原因は、陰 (沈静・クールダウン) という体力の不足なのに、その体力がどんどん弱っていきます。結果として、シーソーが水平を保ったまま破綻の日を待つことになります。

治療は、百会・神闕・膻中・関元・巨闕兪・命門などから選択します。高度な診断力が必要なので、絶対に真似をしないでください。

 

2. 湿痰

湿痰とは水 の滞りのことです。ここでいう水とは、栄養分を含んだ水分のことです。水はサラサラ流れているから水でいられますが、モタモタしだすと粘ったものに変化します。これを湿痰といいます。モタモタする原因は、過剰な水が体内にあるから。つまり、食べ過ぎ・飲み過ぎ+運動不足。これらが湿痰を形成します。湿痰が頭部に至ると、気 (めぐらせる機能) を阻害し、結果として気滞を生じ、頭痛となります。

食べ物は、糖分・油脂分に注意。長い蓄積が湿痰を生みます。

前額部を中心に、重い痛みがハチマキで頭を覆うような感じ方をします。

湿痰を取り去る調整法 (瀉法) を行い、治療します。多くは脾臓と関連のあるツボを用います。脾兪・胃兪・豊隆など。

≫「湿痰とは」 (正気と邪気って何だろう) をご参考に。
≫「東洋医学の脾臓って何だろう」をご参考に。

3. 瘀血

気滞が長期間いすわると、めぐりの悪さが血を凝結させます。血がモタモタした状態を瘀血と言います。ストレスや運動不足は気滞を生み、その結果、瘀血を生み出すというわけです。瘀血が頭に存在すると、その部分の流通は復活しません。瘀血が気滞を生み、気滞がまた瘀血を生むという悪循環に陥ります。

刺すような痛みが特徴です。また、瘀血は一か所に留まる陰の性質があるため、決まった箇所が痛みます。

血 (物質) は気 (機能=陽) に対して陰の性質をもっており、瘀血の頭痛は、夜中 (陰) に増悪するのが特徴です。これでは疲れが取れず、頭痛も治りません。

血に関わる特殊なツボである三陰交や臨泣などを用いて、瘀血を取り去る調整法 (瀉法) を行い、治療します。瘀血は、気滞がこじれて生じたものであるため、難易度が高い調整法となります。

≫「瘀血とは」 (正気と邪気って何だろう) をご参考に。 

4.気血両虚

気も血も足りない。頭痛の原因は「とどこおり」つまり気滞でした。気が足りないなら動く力はなくなるでしようが、痛みは出ないのではないでしょうか。この疑問を解決しながら、説明していきます。

気血両虚とは。顔色が青白く、呼吸が浅く、少し動くとハアハアいう。そして食が細く、目に力なく、うっすら汗をかきやすい。何をするにもしんどい。そういう虚弱体質をイメージしてください。

こういうタイプの人を「気虚」と言いますが、それが長期に渡ると血に影響が出て「血虚」も併発します。

血は気を生む燃料ですから、慢性的な血虚は必ず気虚を伴います。しかし、ここに冒頭の「火事場の馬鹿力」すなわち興奮状態が加わると、気虚は必ずしも自覚されなくなり、しんどいと感じたり感じなかったりします。

感じないときは「気実」と呼ばれる状態になっているときです。血虚気実という病理があり、血が弱るとと逆に気が頑張る場合があるのです。これが興奮です。気実=気滞 です。

血は陰で下を支配します。気は陽で上を支配します。下が弱って上が勝つ…陽亢とよく似た構図となります。

 

つまり、血が弱ると気も弱るケースと、血が弱ると気が頑張るケースがあり、この両者が混在することがあるのです。これを気虚気滞証といったりもします。虚実錯雑の複雑な病態です。要は、血虚を挟むとややこしくなるということです。

気虚気滞証の頭痛は、フラフラする感覚の頭痛です。足三里・三陰交・中脘など。

≫「東洋医学の気って何だろう」をご参考に。
≫「東洋医学の血って何だろう」をご参考に。

5. 外邪

昨日まで暖かかったのに急に寒くなった…。低気圧が近づいている…。こういう外部環境の変化を外邪と言います。外邪には、風邪・寒邪・熱邪・湿邪などがありますが、特に重要なのが風邪です。気候が変化するときには低気圧の通過を伴いますが、必ず風が起こりますね。こういう時に頭痛が起こる場合、外邪が原因となります。発熱を伴うことがあります。

自然現象では、風は上空で強く吹き、地表では穏やかです。人体でも、風邪は頭を中心とする人体上部を強く襲います。脳梗塞のことを中風 (ちゅうぶう) というのは、これと関係があります。外部環境 (自然気象) は、内部環境 (人体) と密接な繋がりがあります。人間は、他の動植物と等しく自然の一部だからです。

風邪は色々な外邪と結びつきます。何と結びつくかによって、頭痛のタイプが異なります。

●風邪+寒邪…後頭部から首にかけての痛み…外関・合谷・申脈・三陰交・身柱などで治療。
●風邪+熱邪…割れるような激しい痛み…少沢・関衝・商陽などで治療。
●風邪+湿邪…頭に覆いかぶさるような重さを伴う痛み…外関・合谷・三里・陰陵泉などで治療。

風邪を受ける背景には、血の弱りなど、体力の弱りがあることがほとんどで、それらの体力を補う治療も必要です。 体の弱りがあると、心も弱りやすくなり、心身に波風が立ち、それが外邪と結びつきやすくなって、風邪が入りやすくなります。体のガードを強くして、頭痛が起こらないように体質を改善する必要があります。

≫「外邪って何だろう」をご参考に。 

まとめ

以上、5つの原因に 大きくまとめました。専門家は、もっと細かい分類を把握しています。また、5つの原因は単独で頭痛を起こす場合もあれば、複数が重なって起こす場合もあります。

陰虚と陽亢のシーソーが釣り合ってしまうと、脳梗塞に発展する可能性があります。

また、気滞・邪熱・湿痰・瘀血が結びつくと、脳腫瘍に発展する可能性があります。

ただ単に、痛みを止めればよい、という発想ではないということが分かります。循環機能の衰えがなぜ起こるか…という観点で、機能的・内科的にフォーカスする必要があります。

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