芍薬…ヤサシイココロ

「こんにちはー。」
「ハーイ。」
「勝手口からですみません、これ、お母さんに…。」
「わー、きれいな! こんなにたくさん…いつもありがとうございます!」

生前、花が大好きだった母に、季節ごとの綺麗な花を届けてくださる近所のおばちゃん。
畑で、いろんな花や野菜を育てておられます。
ついこないだは、スナップエンドウを自転車のカゴに入れておいてくださいました。その前は菊、その前は栗、その前は…
(=_=) ゜゜゜モウワスレルホドニ

抱えるほどの花の束。
院にも飾らせていただきました。

今が盛りの、芍薬 (しゃくやく) 。
深く鮮やかな緑の葉に、淡く紅をさした花がよく映えます。
こんな美しい花の根が、非常に多用される漢方薬でもあります。

根の部分が漢方薬になります。
芍薬の根をそのまま使用すると赤芍 (せきしゃく) といい、
根の皮を取り除いたものを白芍 (びゃくしゃく) といいます。

赤芍は、出血に使われます。下血や喀血などを止める薬です。どんな出血でもいいわけではなく、熱入営血と呼ばれる病態に用います。

有名なのは、白芍のほう。

漢方薬の原点である、中国漢代の書物、「傷寒論」の筆頭として登場する薬、「桂枝湯」で用いられています。この桂枝湯 (ケイシトウ) を原型として、様々な漢方薬がアレンジされ、発展していきます。東洋医学を学ぶ際に、誰もがまず勉強するお薬です。

ちなみに桂枝湯はツムラの45番。その内訳は、この白芍のほかに…
肉桂 (にっき) の枝・ナマの生姜・棗 (なつめ) の実・甘草 (かんぞう) です。

山林原野に分け入り、あらゆる生薬を一つ一つ試し、皮をむいたり、煎ったり、乾かしたり、茎がいいのか、根は種は…。そのうえ、それらをブレンドして薬効を確立し、東洋医学を築き上げてきた先人に、改めて敬服せざるを得ません。

芍薬甘草湯 (シャクヤクカンゾウトウ) 。
もしかしたら、ご存知の方もおられるかもしれませんね。
これも白芍です。白芍と甘草でできたお薬。
ツムラの68番です。こむら返りといえば、これ。よく病院で処方されている薬です。
もちろん、病名診断は禁忌ですので、どんなこむら返りにでも効くわけではありません。
でも、漢方薬を良く知らない先生でも、割と気軽に出せる薬だと思います。
こむら返りを起こしたとき、頓服的に効きます。

白芍は、血を補う薬。
鍼灸なら、三陰交というツボが白芍と同じ働きをします。

血とは…。
ブラッドという概念とは、重なる部分と重ならない部分があります。
血は陰 (いん) です。
陰陽論ですね。
陰と陽は真逆にして一致協力する関係。
男と女も陰陽です。N極とS極もそう。

陰とは、落ち着き・休息・潤い。
陽はハツラツ・活動・熱気。

血は陰です。
簡単に言うと、恵みの雨みたいなもの。
乾いた土を潤おし、万物に安らぎを与え、伸びゆく命を支えます。

こむら返りは、筋肉に潤いが足りないんやな。
身も心も乾いてカラカラ。
現代社会はストレス社会。
気持ちばかり先走って、体がついてこない…ああ、落ち着かない…。

しっとりと柔らかで、まんまる。
やさしい手のひらに包まれているみたい。
そんな芍薬の花を、「陰 (かげ) 」で支えている根っこ。
それを薬用することで、心にも体にも潤いを取り入れる。
古代中国人は、そういう発想で、芍薬の根を煎じて飲んでみたのかもしれませんね。
はからずも、それが見事なまでに的中し、現代に受け継がれている…。

僕は、
その根を煎じていただくまでもなく、
このみずみずしい花と、
おばちゃんのやさしい心に、
美しい「血」を補っていただきました。
(*´▽`*) オレモモットヤサシイキモチデ…

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