逆流性食道炎…東洋医学から見た2つの原因と治療法

胃からスッバイものがあがってくる。胸が焼ける、場合によっては激痛を感じる。臭いゲップが出て、胸から胃にかけてムカムカ・モヤモヤする。逆流性食道炎の症状です。東洋医学では「呑酸」といいます。もちろん遠い昔からある病気で、東洋医学がこれと向き合ってきた歴史は非常に長いものがあります。

基本病理は「肝気犯胃」

その長い歴史を経て、東洋医学がまとめた逆流性食道炎の基本病理があります。「肝気犯胃」です。肝気が胃を犯す。肝気とは何でしょう? これはストレスと深いかかわりを持ちます。

もともと逆流性食道炎はストレスと関係があると言われますが、西洋医学的にこれを治療するのは非常に困難です。なぜなら、ストレスは肉体的パーツ (物質) ではないからです。

西洋医学は物質を基礎として発展してきました。ですから、パーツの修理は得意です。ストレスに関しては、心療内科的な投薬を行なったりしますが、真の原因を除去できるわけではなく、脳の活動を鈍くすることで対処します。なので副作用が必ず付きまといます。

東洋医学は機能を基礎として発展してきました。機能は目には見えません。たとえば脳は物質なので見ることができますが、「こころ」は機能なので見ることができない…そう考えると分かりやすいかもしれません。東洋医学は、これにうまく切り込んでいきます。機能が基礎だから切り込みやすい。その東洋医学が名づけるところの肝気とは何なんでしょう。

肝気とは

肝気とは、肝臓の気のこと。

肝臓とは、「東洋医学の肝臓って何だろう」で詳しく説明しましたので、ご参考になさってください。気を付けていただきたいのは、西洋医学でいうところの肝臓とは違うということです。肝臓とはもともと東洋医学の言葉なのですが、西洋医学は東洋医学の言葉を転用し、誤用しているので非常に紛らわしくなっています。肝臓とは生命エネルギーの一つの側面です。

≫「五臓六腑って何だろう」をご参考に。

気とは機能のことです。

ですから肝気とは、肝臓と名付けられた性質の機能を示したものです。その性質は「条達」という言葉でシンボライズすることができます。

誤った肝気

条達とは一条 (ひとすじ) にスムーズに伸びること。若木が上に向かって伸びる…あるいは子供が心身ともにスクスク成長する…それが条達です。愛情・理性・勇気…大人になっても精神的な成長は止むことがありません。

同時に欲望・憎悪・憤怒なども芽生えますが、最終的には良い感情が悪い感情に打ち勝つ。これが人間の成長であり、正しい条達です。ところが悪い感情が良い感情に打ち勝って成長してしまう。これは誤った条達であり、誤った肝気です。

誤った道は途中で進めなくなります。そこで滞りができます。つまり、誤った肝気は滞りを生み、なおもその滞りを無理に突き抜けようと頑張ります。こうして誤った肝気は、肝臓の異常な高ぶりを生みます。東洋医学は、ストレスをこのように解剖します。

胃に影響

肝臓の異常な高ぶりは、胃 (脾臓) ・腎臓の弱りを生む…こういう法則があります。これを説明しましょう。

不自然な「肝木」

肝臓は木に例えられ、胃は土に、腎臓は水に例えられます。山の土に根ざした木々を想像してみてください。これに人の「欲望」が加わった状態…これが現在のスギ・ヒノキに埋め尽くされた人工林です。雑木は伐採され刈り取られ、用材として金になるスギ・ヒノキのみが成長する。これは誤った成長、つまり誤った条達です。

「脾土」が酸性に

こういう山は保水性に乏しく、土は痩せてしまいます。そのため、広葉樹が豊富な自然林から湧き出る水と異なり、針葉林から生まれた水は濁っています。雨水は浸み込まず土の表面を流れる傾向にあるためです。針葉林は近年の土砂災害の一因といわれます。これが酸を含んだ胃液が溢れる姿と相似関係となります。スギやヒノキの山林は土壌が酸性になることで知られています。

肝気犯胃とは

古代中国人は、肝臓を木、胃を土に例えています。木が狂う (針葉樹の人工林) と、土に酸っぱい水 () 酸性土壌が溢れる。人工林もない時代に、ここまでつじつまの合う説明をするとは不思議ですね。

このように、誤った木 (肝臓) は、土 (胃) ・水 (腎) ともに弱らせるのですが、体質的にもともと消化器が弱い人は、ストレスが胃に来ます。これが肝気犯胃です。

≫「東洋医学の脾臓って何だろう」をご参考に。
≫「東洋医学の腎臓って何だろう」をご参考に。

2つの分類

ターゲットは肝臓です。同時に弱りのある胃もフォローする必要があります。水をたくわえ、木を育てる「土」がかなり弱っているからです。それほど木が異常をきたしている、ともいえます。 分かりやすく、2つに分類してみましょう。

1.肝気の高ぶりが中心となるもの

症状
逆流性食道炎の症状のほかに、
●脇腹が張る、気持ちが落ち着かない、怒りっぽい…①
●口が乾く、のどが渇く、口が苦い、舌が赤い、舌の苔が黄色い…②
などが見られることがあります。

①は肝気の高ぶりを示す症状。
②は肝臓に熱をもっていることを示す症状。

肝気が高ぶると滞ります。滞りは緊張を生み、緊張は熱を生みます。空気も圧縮すると熱を帯びます。地球の中心部はものすごい圧力で灼熱の世界です。
春先、一面スギに覆いつくされた山々を見たことがあるでしょうか。花粉をたくわえた花は赤みがかっており、山は褐色に染まります。まるで、山が怒り狂う寸前のような異様な景色。誤った肝気は熱を持ちやすくなります。

 

治法:清肝泄火,和胃降逆。
肝気の高ぶりをしずめ、熱を取り除きます。同時に胃を少し温めスッキリさせます。

鍼灸:肝兪・胆兪・百会・行間・陽陵泉など。
漢方薬:左金丸 (黄連・呉茱萸) など。

2.胃の弱りが中心となるもの

症状
逆流性食道炎の症状のほかに、
●唾液が多い、温かい飲食物を好む、手足が冷える、下痢しやすい、舌が白っぽく苔も白い…③

③は全て胃が弱ったために冷えを呈したことを示す症状です。

スギの人工林が放置され、土の養分が土砂とともに流され、土が痩せてしまった状態。土は水を蓄えることができず、あちこちに溢れ出ます。胃からあがってくる胃液、唾液の多さ、水様下痢など、水液が溢れ出す症状は冷えを示します。水は陰性で冷えです。土を日光で温めながら、広葉樹の生育を促し、肥沃な土を復活させる必要があります。

 

治法:温中散寒,降逆制酸。
胃を温めて寒を散らし、胃をスッキリさせます。胃が復活すれば自ずと肝気は静まります。

鍼灸:中脘・足三里・脾兪・胃兪・外関・列缺など。
漢方薬:香砂六君子汤加吴茱萸

まとめ

臨床では①②③すべてが重複して同時に見られます。だだし、ウェイトがどれに偏っているかは、患者さんによって個性があり、中心となる病態を見抜いて適した治療を行います。

機能を基礎とする東洋医学だけに、ストレスを立体的に捉えており、それが肝気です。肝気の治療方法は数千年前の歴史のフルイにかけられて継承されたものです。気持ちに余裕ができ、ホッとする時間が増えれば、胃がここにあることすら忘れてしまうはずです。

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