腰痛 (74歳)

××年1月21日。74歳の女性。
右腰が痛く、捻ると痛い。
寝返り困難。うつ伏せになるのに1分近くかかる。
痛みは自然に出てきた。何かのきっかけで痛くなったわけではない。
普段から忙しくしている。
「痛み止めやコルセットはあかんよ、ほんまに必要な時だけにしてね。痛みだけを取ろうとしたらあかんよ。治療したら、気持ちがホッとするから、ホッとしたら短時間で疲れが取れるから、疲れが取れたら痛みは勝手に取れるから。これから、そういう治療をやりますからね。」と、諭す。

診察

井穴診…右竅陰が不通となっている。右丘墟が実。
背候診…十七椎下に軽度の圧痛。左三焦兪の虚。右気海兪が実で痛む箇所となっている。
腹診…左不容の浅部に寒邪、深部に邪熱。左右の章門の邪気の絶対量が同等。空間は下。
脈診…細・渋・緩。左が沈位、右が中位に脈の中心がある。

病因病理

①痛みの基本病理は「ブレーキ」。スピードが出過ぎている (無理をし過ぎている) と、体は痛みを出してストップさせようとする。痛いと動きづらくなり、自然と減速する。
ただし、本人に無理をしている自覚はない。ただ腰が痛いだけだと思っている。これは気で持っている状態。若いころからバリバリやって来た勢いが止まらず、いつのまにか年を取って、火事場の馬鹿力を出していることに気づけない。
「上」に気が昇った興奮状態は疲れを感じにくくさせ、水面「下」で体力がドンドン衰えていく。上 (肝臓) が高ぶり、下 (腎臓) を弱らしている。体はそれを何とか回避しようと、あるタイミングで信号として痛みを出し、それに気づくように仕向けているのだ。痛み止めやコルセットなどは、この信号を効かなくする。これらが良くない理由だ。

※肝臓・腎臓などの言葉は、東洋医学では意味が全く違います。なぜ? 詳しくは「五臓六腑って何だろう」 をご参考に。

そういう前提をふまえたうえで以下の原因がある。

②1月初旬から急に寒い日が多くなった。中旬にいったん寒さが緩んだが、ここにきて再び強い寒波。多くの患者さんが冷えを呈している中、この患者さんも例外ではない。冷えは体のヒーター (腎臓) に負担をかける。腎臓は人体の下にあり、建造物でいえば基礎や一階部分にあたる。それが弱ると上が強くなり、最上階が非常に重く、基礎が非常に弱い建造物と同じような形になる。頭でっかちの建物は左右に傾きやすい。ゆえに左右に問題のある痛みが出やすくなる。

①は誤った肝気。すなわち肝気の高ぶり。誤った肝気とは、道なき道を行くのと同じで、いずれ行き詰まり、滞る。肝鬱気滞だ。
②は腎虚肝鬱による胆経異常。

これらを踏まえて、さきの診察内容を検討してみる。
右竅陰・十七椎下の反応・回旋痛…胆経腰痛であることをしめす。
左三焦兪の虚…下の弱り (腎虚) 。左が弱った分、相対的に右気海兪が緊張し痛みが出る。
左不容の浅部に寒邪…冷えを示す。
左不容の深部に邪熱…冷えに格拒された邪熱。気滞化火がもともとあり、冷えに阻まれて気分のやや深い部分に押し込められている。冷えを除けば取れる程度のものではなく、邪熱は邪熱で取る必要がある。
左右の章門が同等・左が沈位、右が中位…どちらも、陰陽の境界がぼやけていることを示す。境界がぼやけると陰陽が働かず、痛みも治癒しない。

診断

本…肝気偏旺による胆経異常。
標…寒邪による下の弱り。

冷えを取るのに適した穴処を使う。
陰陽の境界に直接治療するため、任脈を使う。
空間が下なので反応している穴処・気海を使う。

この気海は
まず補って左右の胆経を動かし、
後に瀉して寒邪と気滞を散らし、
再び補って元気を増し、
再び瀉して深い熱を瀉す。

鍼をするならこのように細かく補瀉をするが、気海の穴処の緩みが強く、面倒なので灸でやることにした。相手は寒邪ということもあるし。
ただし、灸で深い邪熱が取れるかどうか気をつけながら…。もし取れなければ、あとで三陰交で取ればよい。

治療

気海に灸を15壮すえる。
その後20分間休憩。その間、熟睡。
目覚めるなり、にっこりして「ああ、気持ちよかった」

治療

右竅陰・左三焦兪の反応がとれる。深い邪熱も取れている。
寝返りが5秒前後でできた。

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