処暑…営血分の熱+疏泄太過

記録的猛暑が続いたのは、ここ飛鳥地方も例外ではなく、しかしお盆あたりからそれもやや下火となり、朝晩は涼しささえ感じられる日も出てきました。
猛暑が続いていたころからの診察で得た特徴を、備忘録として記します。

脈幅はありません。
腹診では両不容に邪熱があります。
中脘の邪は面積が小さく気海の虚は面積が大きいケースが大半です。この状態を疏泄太過と見ています。もともと疏泄太過気味の人はもちろん、そうでもない人もこの状態に陥っている感があります。
≫脈幅がないのは暑邪が強すぎるからだろう。
疏泄太過については、なぜこれほど多いのか、ずっと考えている。異常な暑さとはいえ、これは自然による自然現象である。自然の一部である人間もこれに従わざるを得ない。しかし、われわれは、クーラーという人工的環境の中で暮らしている。クーラーの部屋から部屋へと渡り歩いている。だから仕事もできるし、睡眠もとれている。しかし、クーラーを持たない本来の自然動物ならば、活動はかなり制限されているところだろう。実は、その制限された活動量こそが自然なのかもしれない。つまり、われわれは人工的環境をつくり本来なら不可能な活動量を絞り出している…そういう機序で疏泄太過が増えている、という仮説を考えている。暑さに負けず、体を動かし汗をかく時間を十分に持つことのできている人は、疏泄太過になっていない。クーラーの部屋に入っても元気にならず、かえって眠くなるという風なのが良いと思う。
ただし、疏泄太過を起こしている人は、みな症状的には安定している。安定している間に、鍼治療で水面下の疲労 (正虚・邪実) を軽くにしておくことが可能である。こうすることによって、疏泄太過が下火になるであろう秋に症状が出ないようにしようという意図をもって治療に当たっている。そういう意味で、この特別な夏は、治療なしでは乗り切りにくいのかもしれない。

そんな状態が続いていますが、それに変化が見られ始めたのは、8月4日から。
やはり中脘・気海の反応から疏泄太過があります。両不容は邪熱が出ていますが、両章門にも同時に邪が見られるケーがちらほらみられるようになりました。両章門は、表在は冷えで、深部下方に邪熱があり、この邪熱は営血分の熱であると考えています。左右どちらかの三陰交にも取れにくそうな邪があり、これは名医・藤本蓮風先生のおっしゃるように、間違いなく営血分の熱です。
≫少し暑さが落ち着き始めたころからである。気分にあった邪熱が、寒邪によって格拒され、営血分にこもるという現象が起こったのだろうか。この深い部分の邪熱がこれから涼しくなるにつれて、色々な症状を引き起こす根っこになるであろうと予想しつつ。

疏泄太過に対して百会に補鍼 (直刺・針穴をふさぐ補法の手技) を行うと、脈幅が増し、どちらか一方の章門の邪のみが残ります。同時に三陰交の邪が浮いて、簡単に取れそうな感じになります。

ここで三陰交に瀉法を行ってオチです。

この三陰交で営血分の邪熱をきっちり取っておかないと、水面下に潜んでいた邪気が暴れる可能性がありますので、慎重に腹診を行っています。「この頃はここには邪が出ていないから診なくても大丈夫だろう」と油断していると、いつ変化が起こっているか分かりません。先入観を去って常に初心に帰り診察することが大切だということを再確認しました。

百会 (補) ‐‐三陰交 (瀉)  を一穴で行うことも可能です。百会を顖会に向かって補法で斜刺し、抜鍼時は穴処を押えない瀉法の手技を行います。これで章門にも三陰交にも邪を残しません。
≫営血分の熱を取るツボは三陰交である。百会一穴での処置は、この基本を踏まえたうえでの応用である。むやみに使うべきでないことは当然である。人体の前面は陰を、後面は陽を支配するので、顖会に向かって斜刺すると陰分に届きやすくなるのだろうか。とにかく、刺す向きを変えるということだけで、大きな変化となる。鍼の妙である。

その他、脈幅なし、両不容・両章門に邪が出て、疏泄太過のものもあります。やはり百会を顖会に向かって斜刺でいけます。

また、脈幅なし、両少腹に瘀熱の反応あり、中脘の邪は大きく疏泄太過は起こしていないものも一度見かけました。臨泣には反応なく左三陰交に沈んだ邪がありました。脈幅なしで腹診の邪が表現されているので、陽維脈の外関を診ると右に反応があり、望診で神門に向かって刺した方が補いやすいと判断して斜刺すると、両少腹・左三陰交の反応が消えた、という例もあります。抜鍼時は望診で瀉法の手技の方が気機が整いやすいと判断し、鍼穴をふさがずに抜鍼しました。直後から体が軽くなったとのことでした。

狂気じみた暑さは、これで一段落でしょう。ホッとしますね。ホッとしたとき、体は最も素直な状態となります。ため込んでいた疲れがあれば、それが表面化するかもしれませんので要注意です。ただし、疲れが症状として表面化すると、本人は体を休めようとするので、疲れは取れる方向に進みだします。一番よくないのは、隠れた疲れをため込んだままにしておくこと。政府もM問題とかK問題とか、ニュースやワイドショーをかなりにぎわせましたが、根本は隠したことが批判されていますね。正直にオープンにやっていれば、批判も少なく、組織の体質も改善されるのですが…。人体組織でも、疲れが水面下に隠れ、それをずっとためていると、ガンや脳梗塞になりやすくなります。疏泄太過を見極める診断力があれば、これらの予防・治療ができます。疲れを質の良い睡眠に変えて取り去る力があります。鍼が効きます。

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