腹水…東洋医学から見た7つの原因と治療法

癌を治すうえで、必要な認識があります。癌が進行したときに、やがて出てくる症候です。すなわち、出血、腹水、痛み、黄疸です。これらすべてに対応できて、はじめて癌と向き合うスタートラインに立ったというべきです。病気を治すということの最終目標は、難治と言われる病気から人を救うことです。癌に向き合うということは医療人として当然の目線であると思います。

腹水は「鼓脹」

腹水は、水がたまる病気の一つです。体内における水は、サラサラ流れていれば生命力そのものですが、滞ってしまうと生命を邪魔するものに変化します。滞った水のことを水邪といいます。

腹水は、簡単に言うと、腹部に水がたまる病気です。東洋医学では「鼓脹」といいます。
水がたまる病気には、ほかに浮腫があります。手足や顔に水が溜まって、むくむ病態です。東洋医学では「水腫」といいます。
鼓脹と水腫は対比して考える必要があります。

「鼓脹」と「水腫」

鼓脹は腹です。まず腹部に水邪がたまり、それが悪化すると手足や顔に水邪が波及して水腫を併発します。
水腫は手足です。まず手足や顔に水邪がたまり、それが悪化すると腹部に水邪が波及して、鼓脹に至ります。

鼓脹は相対的に水腫よりも重症です。しかし、水腫も悪化するとステージが進んで鼓脹となる場合もあるし、鼓脹の腹水が飽和状態となると水腫を併発することもあります。

では、なぜ、同じ水邪なのに、腹部にたまったり、四肢末端にたまったりするのでしょうか。これは、体の弱りがどのステージにあるかによって決定されます。

病のステージ=胃の気

生命のコアは腹部であり、腹部の内訳は肝・脾・腎・胃です。これは「東洋医学の空間って何だろう」でご説明した通りです。

受精卵が初めて「生きる糧」を得たのは着床した部分 (臍) です。また腹部に流注する経絡を見ると、肝経・脾経・腎経・胃経によって腹部は構成されています。ゆえに人体のコアは、物質的にみると臍 (腹) であり、機能的に見ると肝脾腎と胃です。

これが鼓脹と水腫では病のステージが違うことの根拠になります。腹はコアなので、これを病むと重症なのです。水邪がコアを犯すということは、コアそのものが弱っているということです。例えば同じ脾臓を病んでいるとしても、鼓脹病と水腫病とでは、脾臓の病み方が違うのです。

では、どう違うかというと、それは胃の気です。胃の気が窮乏するほどの病み方のとき、生命の求心力が衰えると考えられます。つまり、肝・脾・腎という生命の根幹…求心力は、胃の気に支えられていると言えます。胃は「気血の海」とも称せられ、生命を根っこから支える海のような存在です。

腹水の病因病理

東洋医学では、鼓脹の病は、肝・脾・腎が病み、水邪がさばけなくなるとによって起こると考えます。中医学ではそう説きます。

そこに私見として加えたいのが胃の気です。命に関わる疾患なので、胃の気が大きく関わると考えられます。鼓脹は、胃の気の衰えを念頭に置いたうえで、肝・脾・腎の三臓の弱りにより、水邪がさばけない状態である、という構図があります。肝・脾・腎そして胃の弱りです。

胃の気とは

小さな受精卵からおとなの人間になり寿命が来るまでの間、生命を支えるのは飲食物による滋養です。飲食物を消化吸収する機能こそが命を育て、維持するカギとなります。この機能のことを胃の気といいます。

胃の気と後天の元気とは同じものですが、後天の元気は先天の元気と対比する意味で用いられます。胃の気は、生命誕生後の命を養うものを、究極まで突き詰めたエッセンスとしてのニュアンスがあります。

 

気滞瘀血は陰陽同病

また中医学では、鼓脹は気滞・瘀血・水邪といった3つの病邪によって引き起こされる、と考えます。この意味を考えてみましょう。もちろん、腹水の本体は水邪です。ではありますが、それを取れにくくしているのが気滞や瘀血であり、メインとなる病邪は必ずしも水邪であるとは言えません。

気滞と瘀血が両方あるということは問題で、陰陽ともに病むということです。そもそも、陰が病めば陽がそれをカバーしようとし、陽が病めば陰がそれをカバーしようとする働き、これが本来の陰陽の姿です。それが機能していません。

両方病むということは、それだけ重症で、陰陽を分ける境界がぼやけるから、このようなことが起こるのです。ぼやけるのは陰陽の幅が狭くなってしまったことが原因です。気血という陰陽を大きなものにするのは水穀の精です。水穀の精は胃の気によって得ることができるものです。結局は胃の気がかかわるのです。詳しく見ていきましょう。

陰陽の幅を作るもの

そもそも、鼓脹…つまり腹水の中身は水です。正確には、栄養分を含んだ水で、末期の腹水をおこした患者は、この腹水を栄養分にして、食べなくても生きながらえる、とも言われるくらいです。この水は、全身をくまなく循環すべきもので、循環さえしていれば命の根源ともいうべきものです。この水のことを東洋医学では水穀の精といいます。水穀の精とは、飲食物から得られた精のことです。

精については、「けいれん…東洋医学から見た6つの原因と治療法」に詳しくご説明しましたので、それをご参考にしてください。「けいれん…」でも触れたように、精は陰陽の境界をなすものです。陽を生み、陰を生みます。この精を飲食物から得る働きが胃の気なのですから、陰陽の幅がどれだけあるかは、胃の気の強さと水穀の精の充実度にかかっていると言えます。胃の気と水穀の精は表裏一体、陰陽の幅を作り、生命を支えるのです。

水穀の精が生み出した陰陽は気血となります。陽は気 (機能) となり、陰は血 (物質) となります。もし、気が滞ると気滞となり、血が滞ると瘀血となります。

取りにくい水邪

気滞と瘀血については以上です。次に水邪です。私見ですが、水邪には2種類あります。取れやすい水邪と、取れにくい水邪とがあり、それらが存在する場所によって分けられます。この場所について明確にしておきましょう。一つ目は口から肛門までの管のなかにある水邪、二つ目は体に吸収されて後の水邪です。

腸管にある水邪は陽明病の範疇でしょう。邪は陽分にあり、肌肉 (気分) にあると思います。これは瀉法で比較的簡単に取ることが出来ます。

問題は、吸収された方の水邪で、これは水穀の精となるべき水が、そうなれなかったものです。水穀の精=脈といえ、ゆえにこの水邪は脈にあると考えられます。つまり境界が侵されていることになります。これはまとめて取るのが難しく、俗に「湿は留恋する」といわれるものです。鼓脹の水邪はこれに当たります。

中医学はこのような区別をまだしていません。

脈とは。精とは。

私見として展開します。皮毛&肌肉:筋&骨 を分ける境界が脈です。皮毛と肌肉は陽分に位置し、活動そのものが顕現する領域です。筋と骨は陰分に位置し、活動を支える土台の機能を果たす領域です。脈は水穀の精が構成する境界です。精とは、動に変わる寸前の静のことです。脈が境界となって活動 (陽) と土台 (陰) を生むのです。

 

肝脾腎の失調

さて、これら気滞・水邪・瘀血が、肝脾腎の失調によって産生される機序を確認しましょう。

気滞や瘀血は肝臓の疏泄不及によって起こり、水邪は脾臓の運化不足によって起こります。肝臓が病むと、脾臓も病むという病理 (木乗土) があり、気滞・瘀血・水邪は同時に起こりやすくなります。また、肝臓の疏泄も、脾臓の運化も、腎臓によって助けられているので、肝・脾が弱ると、その土台である腎臓も弱ってしまいます。

また、脾臓も腎臓も陰陽の境界となり、非常に重要です。脾臓は中焦を支配し、生命を上下に分けたときの境界となります。腎臓は精の根本であり、精は動と静の境界となります。

腹水発症のストーリー

これら述べた内容を並べて、集約して考えると、肝・脾・腎の病、気・血・水の滞り、境界・胃の気の弱り、陰陽ともに病む…。鼓脹の病の姿が見えてこないでしょうか。

これをストーリーにしてみます。

①ストレスなどで肝臓を病むと、木乗土により、それは脾臓に影響する。
②肝臓は疏泄できず、気滞 (化火) を生む。
③脾臓は運化できず、水邪を生む。
脾臓に負担がかかるこの状態が長く続くと、…
④胃の気の縮小とともに陰陽幅が縮小し、陽も陰も病む事態となる。
すなわち、…
⑤気 (陽) が滞り気滞を形成し、血 (陰) も滞り瘀血を形成する。
⑥陰陽ともに病むということは、境界が弱るということなので、脈に流れる水穀の精も滞り、取れにくい水邪を形成する。
⑦肝臓が長らく病むと腎臓に負担をかける。
また、
⑧脾臓が病んでも腎臓に負担をかける。
⑨腎臓は水を動かす原動力であり、取れにくい水邪がますます取れにくくなる。

 

このストーリーを基本として、以下、中医学の分証にしたがって、それぞれを分析してみます。

7つの原因と治療法

1.気滞湿阻

上記ストーリーのうち、
①②③『ストレスなどで肝臓を病むと、木乗土により、それは脾臓に影響する。肝臓は疏泄できず、気滞 (化火) を生む。脾臓は運化できず、水邪を生む。』
の部分が中心となるものです。瘀血・腎虚・胃の気の弱り・境界のぼやけなどは、肝鬱を取り、脾気を高めて水邪を除くことができれば、自然と取れていきます。

症状:
腹部が大きく膨れ、押さえると硬くない。
≫気滞は機能的滞りなので、実体がない病理的副産物である。そのため触っても何も触れず柔らかい。
胸肋部に痛みがある。
≫気滞は肝経・胆経の流注する胸肋部に出やすい。
飲食量が減少する。食後に腹が張り、ゲップでややましになる。
≫脾の気滞を起こしている。
尿量が減る。
≫脾が滞って清濁を分けることができない。「排尿障害…東洋医学から見た7つの原因と治療法」をご参考に。

治法:疏肝理気,健脾利水。
鍼灸:肝兪・行間・脾兪・太白など。
漢方薬:柴胡疏肝散合胃苓湯など。

2.寒湿困脾

上記ストーリーのうち、
③『脾臓は運化できず、水邪を生む。』
の部分が中心となり、さらに水邪が寒化して寒湿となったものです。肝鬱・気滞・瘀血・腎虚・胃の気の弱り・境界のぼやけなどは、脾気を高めて寒湿を除くことができれば、自然と取れていきます。

症状:
腹部が大きく膨れ、押さえるとまるで水袋のようである。
≫水邪は実体のある病理的副産物である。
胸から上腹部が脹悶する。
≫人体の前 (陰・求心力・コア) 、しかも清 (胸部) と濁 (腹部) の境界付近に症状が出る。
温めるとましになる。
≫寒湿は温めると通じやすくなる。
体が重い。
≫水の性質は重さである
寒がる。
≫寒湿の特徴である
手足顔がむくむ。軟便下痢。尿量が減る。
≫寒湿により、脾が滞って清濁を分けることができない。清濁が分けられぬまま溢れると浮腫となったり下痢になったりする。清濁を分けられないと濁陰が下らず尿が出なくなる。

治法:温中健脾,行気利水。
鍼灸:脾兪 (灸) ・陰陵泉など。
漢方薬:実脾飲など。

3.湿熱蘊結

上記ストーリーのうち、
③『脾臓は運化できず、水邪を生む。』
の部分が中心となり、さらに水邪が熱化して湿熱となったものです。肝鬱・気滞・瘀血・腎虚・胃の気の弱り・境界のぼやけなどは、湿熱を除くことができれば、自然と取れていきます。

湿熱について

水邪が熱化する原因は、水が滞ることに伴う気滞で、これが熱に変化します。気滞は水邪による滞りから発生するものだけでなく、ストレスから発生するものもありますので、1.気滞湿阻も絡んできます。なので、多くは肝由来・脾由来、両方の熱が絡むものです。

 

●症状:
腹部が硬く、大きく膨れてパンパンになる。
≫水は有形で押さえると硬く、熱は陽なので激しさがある。
皮膚表面は硬く、内側は脹っていて、押さえられるのを嫌がる。
≫拒按は邪実がある証明となる。
煩熱
≫熱によるもの。
口が苦い。

口苦の原因

口が苦いのは胆汁の味である。そもそも、胆汁は精汁とも呼ばれ、精は清と濁という陰陽を生む。清は「肝之余気」として昇発し肝の疏泄を助け、濁は腑気として下降し後天の精の取り込みを助ける。ふつうは清が昇るだけなので口は苦くない。しかし、胆に熱がこもり、清濁を分けることができないと、本来下降すべき濁までもが上逆するので口が苦くなる。

その背後には誤った肝気がある。すなわち、肝気が上逆したり、横逆したりすると、胆の腑気が下降できず、下降できなければ上逆するしかないので、苦さを感じる。

 

ノドが渇くが飲みたがらない。
≫熱で口渇が出るが、湿があるので水を欲しない
尿は色が濃く出渋る。
≫膀胱湿熱による排尿障害である。
便秘あるいは軟便。
≫熱が勝れば便秘、湿が勝れば軟便となる。
黄疸を伴うことがある。
≫湿熱による黄疸である。
舌の先から縁が紅い。
≫熱証。
苔は黄膩あるいは灰黒で潤いがある。
≫湿熱。

治法:清熱利湿,攻下逐水。
鍼灸: 霊台‐陰陵泉など。
漢方薬:中满分消丸合茵陳蒿湯・舟車丸など。

4.肝脾血瘀

上記ストーリーのうち、
④⑤⑥『胃の気の縮小とともに陰陽幅が縮小し、陽も陰も病む事態となる。すなわち、気 (陽) が滞り気滞を形成し、血 (陰) も滞り瘀血を形成する。陰陽ともに病むということは、境界が弱るということなので、脈に流れる水穀の精も滞り、取れにくい水邪を形成する。』
が中心となるものです。陰陽幅を狭めないように瘀血を取り去ります。瘀血が去れば気がめぐりだしますので、その力を利用しながら水をさばきます。

症状:
腹が大きく膨れて堅い。押してもへこまない。
≫瘀血は有形で堅い。
怒張した静脈が浮き出る。顔面・頸・胸・腕などに紅い点や糸のようなものが散見する。
≫瘀血の徴候である。
脇腹が刺すように痛み触られるのを嫌がる。
≫気滞は肝の疏泄不及が主因となり、血は肝の支配下にあるので、側脇部に痛みが出やすい
唇は紫色。大便は黒色。
≫血瘀は全身に瘀血がある状態をいうが、これらの証候はその氷山の一角として現れたものである
皮膚はカサカサ。
≫新血が作れない。
顔色は黒っぽい。口が乾き水を含みたがるが飲みこみたがらない。
≫瘀熱の徴候である。瘀血が熱化するということは血の領域、すなわち陰の領域が侵されるということである。よって腎に熱が入りやすくなり、その場合顔が黒くなるという徴候が見られる。また、気の領域から血の領域に熱が移動してしまうと、口渇はおこるが水を飲みたがらない。

治法:活血化瘀,行気利水。
鍼灸:臨泣など。陰陽の幅を増やしながら。
漢方薬:調営飲など。

5.脾腎陽虚

上記ストーリーのうち、
⑧⑨『脾臓が病んでも腎臓に負担をかける。腎臓は水を動かす原動力であり、取れにくい水邪がますます取れにくくなる。』
が中心となるものです。脾臓が病むのは、まず脾気を病み、脾陽へと発展するのがほとんどです。脾陽が病むと、それをバックアップしていた腎陽に負担がかかり、脾陽・腎陽ともに病むという形になります。2.寒湿困脾 が虚証に発展したものです。

症状:
腹が大きくふくれ、手足は細く、容姿はまるでカエルのようである。
≫手足が細くなるということは、胃の気の縮小・陰陽幅の縮小である。
あまり腹部の膨張感を訴えない。
≫有形の邪が中心ではなく、正気の弱りが中心である。
朝のうちは膨張感はましで、夕方になると強くなる。顔色は青黄色。
≫気血両虚。
胸から胃が満悶し気持ち悪い。食欲がない。
≫中焦の下降機能が衰えており、そのうえ下焦も衰えているので、気も飲食物も下降しない。
寒さを嫌がり、手足が冷たい。
≫陽虚の徴候。
尿が出にくく下腿にむくみがある。
≫脾が弱って清濁が分けられず、清陽が昇れない結果、濁陰である尿も降れない。腎が弱って気化できないため清陽が昇れない結果、濁陰である尿も降れない。
舌の苔は厚膩で潤っている。
≫寒湿邪がある。

治法:温補脾腎,化気行水。
鍼灸:脾兪 (灸) ・腎兪 (灸) ・気海 (灸) ・関元 (灸) など。
漢方薬:附子理中丸合五苓散 (脾陽虚>腎陽虚) 、済生腎気丸 (腎陽虚>脾陽虚) 。

6.鼓脹出血

上記ストーリーのうち、
①②『ストレスなどで肝臓を病むと、木乗土により、それは脾臓に影響する。肝臓は疏泄できず、気滞 (化火) を生む。』
の部分が陳旧化し重症化したものです。肝火が胃に横逆し胃火をもった形です。肝火・胃火ともに激しい状態です。
まず、出血を止めます。水邪や瘀血もありますが、まずは邪熱を取ることを第一義とします。

症状:
軽症は歯や鼻から出血する。
≫肝不蔵血 (疏泄太過不及混合型) 。肝気横逆・肝火犯胃→胃熱壅盛→出血。出血で実熱をもつ臓腑は肝以外に、肺・胃・下焦湿熱 (膀胱・腸道) くらいなので、本証は肝胃の実熱と考えればよい。肝気が横逆するのは、誤った心神からくる誤った肝気の疏泄である。
重症は大量に吐血する。吐血は鮮紅色。
≫病理は上に同じ。熱が激しいので真っ赤な血が大量に出る。
重症はタール便を排泄する。タール便は黒くて油のような艶がある。
≫気滞血瘀→瘀血阻絡。気滞の原因は、誤った心神からくる誤った肝気の疏泄である。誤った疏泄は自然の理法に反するので、身動きが取れず気滞となる。肝は血を支配するので、疏泄できなければ血も動けなくなる。瘀血による大便は艶がある黒色が特徴。
紅舌・黄苔。
≫肝胃の熱。湿熱

治法:清胃湿熱。瀉火,涼血化瘀止血。
鍼灸:霊台・三陰交など。
漢方薬:瀉心湯合十灰散。

7.鼓脹神昏

上記ストーリーのうち、
①②『ストレスなどで肝臓を病むと、木乗土により、それは脾臓に影響する。肝臓は疏泄できず、気滞 (化火) を生む。』
の部分が陳旧化し重症化したものです。肝火・胃火ともに激しい状態で、意識を支配する心に熱が迫った状態です。
まず、意識を安寧ならしめます。水邪や瘀血もありますが、まずは開竅・清熱を第一義とします。

症状:
神志昏迷、すなわち意識混濁・昏睡状態。
≫心包の営血分に邪熱が迫る、あるいは入る。肝火が心包に伝入することもあれば、胃から心包に伝入することもある。傷寒論にも陽明病で譫語が挙げられている。
高熱煩躁、高熱が出て苦しがる。
≫肝胃の気分に強い邪熱がある。夜間は営血分に入って煩悶する。
怒目狂叫、目を見開き狂ったように叫ぶ。
≫心神が邪熱によって曇っている。
手足の筋痙攣。
≫陽分 (気分) の邪熱が激しすぎて、陰分の領域にある体液 (陰) を乾かす。この時点で陽分と陰分を分ける境界がぼやけている。筋脈が滋養できず、肝 (筋) の陽動的本性がむき出しとなり、痙攣となる。痙攣がひどいならば、これは十二経脈という脈 (境界) の大方が窮して陽分の熱が陰分に影響を与えたということ。すなわち、胃の気の縮小がある。境界は全般に弱るので、心包にも邪熱が入りやすい。
口臭便秘,
≫陽明胃に熱がある。燥屎を形成する。
尿短赤,
≫邪熱が尿を煎じ詰める。
紅舌・黄苔。
≫邪熱・湿熱。

治法:清心開竅。
鍼灸:水溝など。
漢方薬:
安宫牛黄丸…激しい邪熱が心包に内陥したもの。水溝・霊台・三陰交など。
至宝丹…痰熱が竅を塞いだもの。水溝・霊台・豊隆など。
紫雪丹…痙攣がひどいもの。水溝・霊台など。

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