五十肩

「先生、寝ていると右肩がうずくんです。」

「夜はうずきで目が覚めますか?」

「こうして寝ててもね、うずくんですよ」

「刺すような痛みはあります?」

「動かしてもこうしたら…。いまもこの辺が…」

「どんな感じでうずく?例えば重い感じとか、つっぱる感じとか、刺かような感じとか…」

「こうしてると痛いんです。」

「昨夜は眠れなかった?」

「いや、寝るのは寝ましたけど…」

「寝られんほどの激痛ではないんやね」

「いやー、でも痛いですよ」

「ウーーン、あのね。いま、瘀血の痛みかどうかを疑って聞いているんですよ。瘀血っていうのはね、つまり、血と言うのはサラサラ流れていたら体のエネルギーです。でも、それがもたもた動きだすと、そのエネルギーの邪魔をするものになる。それが瘀血なんです。瘀血の特徴はね、刺すような激しい痛みが夜にひどくなる特徴がある。あと、可能性があるのは湿痰の痛み。重いような痛み肩をするのが特徴です。それから気滞。これはつっぱるような痛み方をする。これらのうち、どれが中心となって肩の流通が悪くなっているか、診断する必要があるんです。だから色々聞くんですよ。」

「そうですか。いや、刺すほどの痛みではないです。つっぱる感じもあるし、重い感じもするなあ」

「なるほど。」

左の陰谷に鍼をする。二十分後、鍼をぬく。

「先生、右肩、もう痛まないですわ。」

「そうですか。○○さんは、もともと気滞と湿痰がある。そこにたまたま右肩の筋肉を痛めたんやな。で、その気滞
と湿痰がそこに影響して痛みが出たんだと思います。いまは気滞を取っただけで、湿痰も芋づる式に取れました。気滞が中心だったということです。」

「先生、自然に痛くなってきたんです」

「ウン、肩関節ってね、肘とか膝の関節よりも色んなところに動かせるでしょ。だからその周りの組織はよく傷がつくんですよ。だから炎症を起こしやすい。五十肩の正式名称は肩関節周囲炎ですからね。若い人でも、しょっちゅう肩は痛めているんです。でもね、若い人はそれを治す力が強いんですよ。」

「年をとると治らない?」

「そうそう、でも大丈夫、本当に年をとると、痛みませんから。炎症を起こす力も無くなってしまうんです。」

「そしたら、私はまだ若いってこと?」

「そうそう! でも炎症を自分で治す力は無いんです。中途半端なんですね。昔は四十肩って言ったんですけど、平均寿命が延びてから五十肩っていうようになったんです。いまは六十肩っていわないとイカンな。」

「私もう七十やで」

「お!若い証拠やん!でも『気だけ若いけど体がついてこない』ってなったらアカンよ。中途半端な年代におこる五十肩にはそういう戒めがあるんですよ。体は必ず老いる。では、気をどのように持つべきかってことやな。しかも…『きれいやなあ』『いとおしいなあ』『ありがたいなあ』…こういうみずみずしい若々しさは忘れずにね。」

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