生活習慣病

  例えば、深酒という生活習慣がある。これは肝硬変につながりやすい。こんな大病を引き起こすのは、悪い習慣がなかなか改められないからである。なぜ習慣が変わらないのか。

  まず、お酒を飲んでいて、いきなり肝硬変になるはずはない。毎晩の深酒によって、少しずつ少しずつ肝細胞が壊されていくのである。そしてもう手遅れだというところまでいくのだが、そうなるまで体はそれを黙認していわけではない。肝臓が壊れる前に、二日酔い・胸焼け・胃疾患、その他いろいろな症状を出して、危険を訴えていたはずである。

  二日酔いの頭痛や胸焼けの原因なら、深酒だと誰でも分かる。だが、慢性の胸焼けや胃疾患となると、それが原因なのかどうだか、だんだん分かりづらくなってゆく。酒を一度控えたくらいでは、すぐには改善しなくなるからだ。

  だから努力の矛先は、いつしか習慣を直すことよりも、症状を抑えるほうに向いてしまう。二日酔いには二日酔い止めの薬がある。胸焼けもしかり。胃疾患の薬もある。

  そしてある日、薬では治らない病名が宣告される。肝臓が再起不能になったのである。二日酔いを薬で抑えながら飲酒を優先したことに始まる負の連鎖は、これ以上もう打つ手のないところまで来てしまったのだ。

  生活習慣改善の妨げに、医療が一枚かんでいたのである。

  メタポリックシンドロームでもまったく同じことが言える。コレステロールを下げる薬は、急激な悪化を水際で食い止めてはいるだろう。だがその裏側で、それに頼って暴食をやめない人を増やしてもいるのだ。食べ過ぎていないと思っていても、薬を使っている限りは必ず食べ過ぎてしまう。体の訴えなしに、頭だけで考えて調節できるほど人体の作りは簡単でない。

  軽い肩や腰の違和感、ちょっとした食欲や睡眠の問題など、健康なうちに誰もが経験する体の異変がある。無理のし過ぎや食べすぎなど、原因に思い当たる節があっても、それには目を向けず、医療という手っ取り早い方法で直そうとする。また無理をする、食べ過ぎる。もっとも改善すべき生活習慣は何もかも医療で解決しようとする習慣だったのかもしれない。

  頭痛を調べてもらったら、脳腫瘍だったということもまれにある。何か気になる症状があるとき、その原因は調べるべきだ。だが、深酒の頭痛のように、多くは放っておいても治るものである。頭痛を放っておくことはつらいことだが、それがいやだから深酒はやめておこうという具合に、医療をあえて用いないほうが、かえって自分で気をつけるべきことがよくわかる。

 さらに言えば、そういう医療を主導できる医者であり、そういう医療を希望する患者であるということは、健康であり続けることや、医療費を削減することと同じくらい難しいのである。

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