便秘の症例…コロナ社会の影響

昭和22年1月生まれ。男性。

初診は24年前、開業当初からの患者さんである。
健康管理のために来院されている。現在は週に1~2回のペース。

ここ2週間、便秘がある。3日に1回しかでない。硬くて出にくい。残便感がある。

そう聞いて、少し驚いた。治療をしているのに便秘があるとは、何かある。

まず重要なのは「硬い」という点だ。少なくとも血に負担がかかっているということだけは言える。ストレス (思慮過度) が血を弱らせたか、邪熱が血を弱らせたか、冷えが血を弱らせたか、それともダイレクトに血を消耗する何か (出血など) があったか…。

「便秘…東洋医学から見た6つの原因と治療法」をご参考に。

上巨虚に触れてみる。沈んだ邪がある。これは腑気 (消化管内容物が下降する力) が通じていない証拠だ。便が硬いから腑気が通じない。まずはそう考えるべきである。

舌を診ると、舌苔のみならず、舌そのものが白い。顔色も白い。陽虚を伺わせるような冷えはなく、気虚を伺わせるような元気のなさもない。

血虚を疑い、三陰交に触れてみる。右が虚している。

なにか、生活の上で変化があったはずだ。血を消耗するような何か…。

当該患者は、定年退職後も、片道1時間の電車通勤をされている。しかし、新型コロナの影響で、仕事に出ることが亡くなった。畑をしたり、好きな読書をしたりしている。

読書があやしい。脈診で確認する。現在は1日3時間以上読むとのことだが、それでいいのか。脈の返答はNOだ。1時間ならOKとのこと。

治療はいつも通り。陽維脈を使って、陽の枠を大きくし、枠に入れない余った邪熱が出ないように、脾腎の陽気が十全であるように、調整する。邪熱がなければ陰は消耗せず、陽気が十分ならば血の産生は盛んとなる。

穴処は右外関。少し鍼を操作して、章門 (営血分の熱) ・少腹 (瘀血) の邪もとっておく。当該患者は食養生に気を付けてくださっているらしく、不容・期門には邪がなかった。

3日後来院。前回治療以来、毎日通じがある。小口はまだ硬いが、出てくれるので気持ちいい。
顔色に血色がある。舌も色が戻ってきた。三陰交の反応もない。
読書は、あれ以来していないとのこと。

そういえば、ここのところ、やけに顔色が白いと思っていたのだ。1時間のウォーキングをしてると聞いているのに、日陰を選んで歩いているのかなあ程度に思って追及してこなかった。早めに気づけなかったのは僕のせいだ。もっと早く変化に気づけなければならない。まあ、新型コロナの影響で、家にこもることが多くなり、好きな読書の時間が増えすぎて、血虚を起こしているとは、パッと想像できることではないが、三陰交の反応くらいは診ておくべきだった。そういうことに事前に気づけなければ、予防医学とは言えない。

それにしても、体表観察の重要さである。鍼灸家・湯液家をとわず、東洋医学を実践するものは、臓腑経絡学を基礎に置くべきである。今回の症例も、ただ単に便を通じさせるだけで、読書のし過ぎに気が付かなければ、効いたとしても対症療法に過ぎない。

西洋医学なら、便秘は消化器内科だろうか。おそらく、読書を控えたら便秘が治る…といっても信じてくれないだろう。

目というものは、脳 (思考) と直結していて、目を使えば使うほど脳の酸素の消費量は増える。東洋医学的にいえば、血を消耗するのだ。

血は目だけでなく、身体各所を潤している。血虚になると、ドライアイだけでなく、皮膚のかさつきも起こってくる。皮膚がかさつくということは、消化管の内壁も「かさつく」ということだ。人体を口から肛門までの空洞があるバウムクーヘンのようなものだと考えると、バウムクーヘンが乾いたら、内側の空洞まで乾くのは当たり前のことだ。そういうことが人体でも起こる。便が硬いというのは、「乾く」という病理が非常に多い。

当該患者は読書だったが、みなさんがいま気を付けなければいけないのはスマホだ。在宅時間が増えた方がたくさんおられることと思う。昼夜逆転している学生も多いと聞く。これらはすべて血を、非常に激しく消耗することになる生活習慣である。

近年流行の白内障の手術も、見えなかったものが見えてくるため、目の使い過ぎに自然となってしまう。

血は、消耗したからと言ってすぐには症状に出ないことが多い。証候鑑別診断学の「血虚証」を紐解いてみても、あまり自覚的な苦痛を伴う症状はあまり出ていない。あるのは色が薄い、という現象である。

しかし、血は「気の母」である。血が弱ると、タイムラグを経て、いずれ気に異変が出る。気滞・気虚である。これが出ると、苦痛を伴う自覚症状となる。

血虚がベースで、気滞・気虚の虚実が錯雑するものは なかなか面倒である。パニック障害などはこれに起因するものが多い。この期間、体の異変をきたしている方は多いはずである。しかも、少し遅れて出る場合は、何が原因か分からなくなる。目の使い過ぎがよくない。タブレットのイジり過ぎが、とくに良くないということを、知識として持っておくべきである。

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