芒種…外関で邪気を正気に変える

スイカが枯れた…。

趣味で家庭菜園 (無農薬有機栽培) を、もう20年以上やっていますが、こんな時期にスイカが枯れるのは初めてです。もちろん農薬を使えば枯れたりはしませんが、それはやらない主義なので。

そもそもスイカは南アフリカの乾燥地域が原産で、乾燥したところが栽培に向いています。雨で暑いと弱い。暑くても雨さえ降らなければよく育ちます。だから、梅雨の後半、7月に雨が続いて気温が高い日が続き、その雨が上がって晴れだすと、一気にしおれてしまうことを、今まで何度も経験してきました。でも、7月になるとスイカはもう熟しているので、一回は食べられるのです。その時期に枯れなければ、お盆のころにもう一度収穫できます。

しかし今年は、収穫は無理そうです。まだ実が大きくならないうちに枯れてしまいましたから。

なぜこんなことが起こったのでしょう。

ここ飛鳥地方では、6月10日に雨が降り出しました。それまでは晴天続きで、日中は厚くなりますがカラッとしていて、朝晩は寒いくらいでした。雨が降り出すと、急に蒸し風呂のような湿気と暑さが出てきて、「これはおかしい」と天気図を見ると、やはり梅雨前線がもう、奈良県よりも北に位置していました。このように梅雨前線が北上するのは、この地方では6月20日以降で、それまでは梅雨寒が通常のはずでした。10日も季節が早く進み過ぎているのです。これは明らかな邪気です。

ここでいう邪気とは、順当なその季節らしさを邪魔する天気です。
人体生命においては、正気は生命力、邪気はそれを邪魔する力のことです。

湿熱という邪気が、僕の大事なスイカを枯らしたのです。

そしてこの湿熱は、大切な患者さんのお体にも影響しています。邪熱をひどくし、また湿邪をひどくしています。

これに対して、ぼくは外関を頻用します。外関は陽維脈の主穴で、陽の幅を増します。春分から秋分までは陽の盛んな時期で、自然界でも人体生命でも、陽が主となり陰は従となります。

その陽の幅がスムーズに大きくならないと、自然界の陽気 (暑さ) をしまい込むことができず、しまえない部分が余計なものとして邪熱 (内熱) となります。

また、陽の幅が少ないと気の推動が弱くなって、うまく巡らせることができません。そのため水が滞って湿邪 (内湿) を作ってしまいます。

この内熱と内湿に、暑邪と湿邪が加わって、いっそうひどくします。

陽維脈で陽の幅が増えれば (陽を容れる器が大きくなれば) 、余った余計なものとしての内熱を陽気として受け入れます。邪気を正気に変えるのです。陽気が増せば活動力が増します。すなわち、温煦が強くなり、温煦が強くなれは推動が強くなります。それで、滞った水が動き出し、津液に変えることができます。津液は陰なので、陰不足が解消されクールダウンする力が増します。やはり邪気を正気に変えるのです。

邪気を正気に変える…そんなことが本当にできるのでしょうか?

自然界を見てください。この蒸し暑さと雨の中、雑草はドンドン成長し、森の木々も枝葉を茂らせていきます。稲に至っては水に浸った状態で元気に芽を伸ばします。湿熱を邪気としてではなく、正気として吸収しているのです。ただし、ぼくのスイカは湿熱を正気として生かすことができず、枯れてしまいました。

陽維脈を使う…。陽の幅を増やす…。

では、どうして「陽脈の海」である督脈ではないのでしょうか。簡単に考えます。海水がいくらあっても、それを容れる器がないと入りきりません。もし入りきらなければ、はみ出した分は邪気 (邪魔なもの) 、すなわち邪熱になってしまいます。

陽維脈とは、陽の「綱維」です。綱とは太い綱のこと、維とはつなぎとめて維持すること。つまり形体をバラバラにならないように維持する働きです。海水を容れる器に相当します。

「東洋医学の空間って何だろう」で説明しました。

つまり、督脈と陽維脈は持ちつ持たれつの関係なのです。

もっとも、督脈でも工夫次第ではできます。督脈の傍流である太陽膀胱経の脾兪を選択し、中気を鼓舞して陰陽幅を増やします。それは督脈の「陽の海」を容れる器になりえます。そして同時に督脈で陽を補えば、器に入り切った陽は邪熱にはなりません。そういう意図で、ぼくは小児鍼でこの時期、脾兪を多用します。

ただし、陽維脈の器は陽の器だけでなく、この時期の正気すべての器でもあります。こうハッキリ言うと語弊が出そうですが、陽維脈・陰維脈という両維脈によって正気を容れる器があるとするならば、陽維脈が主導する夏場は、正気を容れる器の大半が陽維脈といえます。ですから、陽気を容れるだけでなく、津液 (水) も容れる。もし陽維脈が機能していなければ、水も余って水湿の邪となるのです。だから外関で水邪や寒湿もとることができる。そういう考え方もできます。

脾兪でもできますが、少し意味が違うようですね。

うちのスイカは、陽維脈が弱かったのです。だから自然界の足早な季節の進み方を、正気 (陽気) として受け容れることができず、邪気 (湿熱) として受け入れてしまったのです。かたや雑草は陽維脈が強かった。だから暑湿をどんどん成長に変えている。

患者さんの生命を、スイカではなく、樹々雑草のようにたくましくする。そうすれば、いま体の障りになっている邪気を、正気に変えることができると思います。

スイカの失敗を、治療の成功に変えなければ。

追記です。

6月16日、梅雨前線が南下、一気に湿気が抜け、朝が涼しくなりました。今朝 (17日) は、もっと涼しくなり、軒の温度計で15℃です。やはり、この地方では夏至までは暑さが安定しない。今度は冷えにも配慮が必要です。外関はこれにもオールマイティーに使えます。

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