秋分…血虚と水邪の関係

庭の片隅に忘れられた猫じゃらしが、日に日に涼しさを増す朝の空気のなかで、最後の力を振り絞るかのように重そうな種を落とそうとしています。

秋分初日の9月22日ごろから、悪化を訴える患者さんがチラホラおられました。お一人お一人を丁寧に診つつ、結果として気付いたのは、右三陰交の虚の反応です。はたして何を意味するのか。

秋分から陰の領域に

毎年、この時期に気にすることがあります。それは陰陽の変わり目による変化です。秋分を境に、今まで昼が長く夜が短かった一日のサイクルが、夜が長く昼が短くなるのです。

人体生命にもダイナミックな変化が起こります。督脈・陽維脈が主軸となっていた夏場でしたが、手のひらを反すかのように、任脈・陰維脈が主軸に入れ替わるのです。

小児鍼では、左脾兪 (督脈を意識) を補うことの多かった夏場から、冬場は中脘 (任脈を意識) を補うことが多くなります。これは毎年のことです。

陰維脈・陽維脈とは

督脈は陽の海です。任脈は陰の海です。陽維脈は陽の綱維です。陰維脈は陰の綱維です。綱維とはつなぎとめるものです。

つまり、海水をつなぎとめるもの…つまり海水の器…つまり綱維とは地球のことですね。地球が陰陽の両維脈ということになります。地球には前後左右はありませんが、地軸があるので上下はあります。

地球は原始的な生命 (着床前の受精卵) を意味すると思われ、上下 (両維脈) ・地軸 (衝脈) ・上下の境界 (帯脈) のみが存在します。衝脈の重要性は周知のとおりですが、両維脈・帯脈は任・督という陰陽が生じる以前から存在する、非常に原始的な陰陽であることが読み取れます。

もっと詳しく

陰維脈・陽維脈については以下の記事をご参考に。

内関…陰を容れる器

ついこないだまで左胃兪を取穴することが多かった一般の患者さんも、9月20日くらいから左滑肉門が多くなり、25日からは右内関が多くなりました。体を丹念に見ていくと、そのツボにたどり着くのです。

おそらく、左胃兪は督脈と後天脾土を同時に補っていたものと思われます。そして左滑肉門は任脈と後天脾土を同時に補う。どちらも後天元気に直接かかわる穴処ですが、こういう配穴は今年の特徴です。やはり、元気が猛暑でかなりやられているのでしょう。

右内関に出始めたのは、気温も下がってすっかり過ごしやすくなってからです。もう元気にかかりきりでなくても良くなったのでしょうか。

三陰交の虚の意味

右内関は陰維脈を非常に意識しています。陰維脈は陰を容れる器です。ここでいう陰とは、正気も邪気もどちらもで、つまり血・水邪を容れる器です。

器が小さいので入る血が少ない。すなわち血虚の反応が出ます。これが右三陰交の虚です。夕方ほど症状がきつくなる。めまいがすることもあるでしょう。血虚があれば気実も強くなって朝の症状の悪化にもつながります。パニックがある人はそれが悪化します。

水邪があふれる

また、器が小さいので、もともとあった水邪が急に入りきらなくなり、あふれる。むくみがひどくなることもあるし、花粉症が出ることもあります。

水があふれているので陰陵泉に沈んだ実の反応が出ます。

血が弱い、陰が足りないからと言って、へたに補おうとすると失敗します。器が小さいからです。血は補えずに、水邪ばかりが増えてしまう。よくある失敗だと思います。

血虚は現代社会の特徴

最も効率的に血だけを弱らせるのは目を使うことです。眼を使うこと・夜更かし・食べ過ぎが、主な血虚の原因です。食べ過ぎると消化器が必ず弱ります。血は食べたものから消化器によってつくられ、夜 (朝ではない) の睡眠が血を一人前に育てます。そして目を使いすぎてそれを消耗させる。

血だけが消耗するのは現代社会の特徴です。

昔は体をよく動かしました。フィジカルの労働は血 (燃料) も気 (活動) も同時に消耗するので、疲れを自覚することできます。しかし、目を使うのは気を消耗しないのでハアハアいうこともなく、疲れないのでうまく血だけを消耗するのです。

血だけが消耗するとブレーキがかかりません。よって、その時は何ともありませんが、あとからボディーブローのように症状が出てくる。気 (活動) に影響が出始めるのです。気と血は一枚の紙の裏表です。必ず影響が互いに及びます。

石油ストーブの石油が血で、温かさが気です。石油が減ったからと言って、急に火が小さくなるわけではありませんね。だから余計に危険なのです。

陰の器が小さい理由

いま、陰の器が小さい状況が急に起こるのは、先ほど説明した陽から陰に転化する時期だからであり、もう一つは猛暑とコロナで活動してこなかったからです。

夏に活動しないと陽の器が大きくなりません。だから陽熱が入りきらずに熱中症になりやすくなるのです。そして陽と陰とは表裏の関係なので、陽の器が成熟しないうちに秋分を迎えてしまうと、それ相応の大きさの陰の器しか用意できないのです。

猛暑から一転、この落差も異常気象でしょう。このような状況は少なくともここ数年は続いています。体はそれにあわそうと必死です。それでも合わせきれず、はみ出した部分がコロナという形で表れているのかもしれません。

強い気滞を示す合谷

白露…少商と粛降」では合谷の邪が出てきたと言いましたが、相変わらず、合谷に邪が沈んだ強い反応が出ています。気滞です。夏の気は高い位置にあります。秋はそれが徐々に降りてこなければなりません。それを気滞が強く妨げている。気が上ではしゃぎすぎて、血を暗耗し、いつまでたっても増えない。

右三陰交の虚の反応は、こんな状況のもとで起こってきたのではないかと分析しています。

水邪も気が降りないことと関係します。昇っている気が秋になっても降りない。これは頭でっかちの建物と同じです。1階が小さくて2階・3階と昇るにつれてでかくなる。下で支える1階 (器) が小さいと、それが支えている3階 (水) が不安定になる。だからこそ合谷の反応 (気滞) を消していくことも大切なのです。

快適な気温は携帯をいじるためのものではありません。

今すべきことは…。

秋に合わせた養生

少しゆっくりとウォーキングしましょう。また、普段の生活のスピードも、それが10だとしたら、8にしてください。涼しくなったからと言ってはしゃいではなりません。土にジンワリ水がしみ込み下に降るように…。急いで水を撒いてもしみ込まず流れてしまいますね。気を引き下げるには、秋の自然と一体化することです。

自然の中で暮らしていると、秋の虫のきれいな鳴き声がします。その声を、耳を澄ませて聞く。ああ、きれいな声だなあ。少し寂しげで落ち着きのある宵。そういう時間を持つことが、今この時期に必要なことです。虫の声が都会の喧騒にかき消されて聞こえなくとも、そんな気持ちの静寂さを、秋の夜長に探してみることです。

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