言葉で効いた…更年期障害の治験

××年8月3日。

女性。51歳。

もともと更年期障害で、それが当院の治療で良くなり、毎日1時間のウォーキングができるようになって、いまは2~3週間に1度、健康管理のためにご来院になっている。

珍しく、朝から電話をかけてこられ、予約日を待たずに来院。何かあったかな…と予想しながら、まずは不問診で診察を進める。

望診

顔面を診ると、鼻の下がクッキリと白くなっており、他は血色がよく赤いとまではいかない。ノボセがあるか? と足を触ってみると、この暑さにもかかわらず非常に冷たい。この時点でノボセが強いことが分かる。

印堂・天突に反応はなく、ウイルス感染・表証は問題にならない。

脈診

悪化直前の兆候なし。左右とも中位。≫陽経が候補として可能性が高い。脈幅は中等度。≫ここまでで補法もしくは平補平瀉のどちらかが確定。女脈。≫腹部の穴処は除外。熱証を裏付けるような脈ではない。

青で示した≫部分は専門的考察です。専門の方のみご覧ください。

腹診

不容・期門に邪なし。食べ過ぎが原因ではない。
章門・少腹に邪あり。≫深い部分に邪熱・瘀血がある。左右ともにあり。≫正気と邪気、という陰陽が拮抗している。正気を強くすると邪気が弱くなり、邪気を弱めると正気が強くなる…というのが正常な陰陽の姿だが、そうならない。正気を強くすると邪気も強くなり、邪気を弱くすると正気も弱くなる…そういう状態である。平補平瀉が確定。

空間診は右上。≫右上の穴処が確定。

切経

手に触れると少し熱い。
陽池に邪なし。冷たい飲食の取り過ぎが原因ではない。
後渓に邪あり。≫邪熱がある。大巨に邪あり。≫腎に負担がかかり、オーバーヒートがあることを示す。邪熱を取る穴処、あるいは陰を補う穴処が候補となる。無理のし過ぎが原因か。
合谷・太衝に邪なし。ストレスが原因ではない。

 

ここまでの所見から、おそらくノボセがあって上が熱く、首や肩が凝る感じがあるだろう。しかし原因は何だろう。後渓+大巨の反応から、何か無理するようなことがあったはずだ。…そんなことを予想しながら問診を始める。

問診

「どうですか?」

「1週間前から首から上が熱くて、3日前に頭に拍動痛が出て、脳がおかしくなったと思って、おととい病院に行って検査してもらいました。結果は正常だったんですけど。痛みが止まらなくて、昨日も今朝も病院の痛み止めの薬を飲みました。今は朝よりはましなんですけど、やっぱり額のあたりが重くて、顔が熱いです。」

今年になって初めてのホットフラッシュである。

 

「痛み止めは良くないなー。これは問題を先送りにすることになる。その時は良くなったとしても、後で面倒なしわ寄せが来る…。」

「そうですか…。」

「政治でも問題を先送りにしたら後でかえってややこしくなるでしょ? 森友問題とか、ありましたね。会社の経理でもそうですよね。数字をちょっといじるとか。組織っていうのはそういうことができるし、その結果、そういうことになってしまうんです。政治も会社も一人一人が集まった組織、人間も一つ一つの細胞が集まった組織なんです。その場のごみを濁すことは解決にならない…。」

「ああ…」

「まあたぶん、雨続きから急に暑くなったでしょ。それが原因だと思う。でもね、気象変化はコントロールできない。そういうものを原因にしても解決できませんね。コントロールできるものを原因にすべきなんですよ。気象変化の影響を、なぜ受けたか。」

「無理しすぎたと思います。」

「どんな?」

「2週間前から、のこぎりを使って棚をつくったり犬を何度もお風呂に入れたりしました。夏になると皮膚病が出るのでかゆがるんです。棚は、少しずつやればよかったんだけど、一気にやってしまって…。犬は一回お風呂に入れると1時間はかかるし、体が大きいから支えながらやるので、すごく疲れるんです。あんなに何回もお風呂に入れなければよかったんですけど、かゆがるので、かわいそうで…。」

「なるほど、おっしゃる通りですね。一度にやってしまうというのは良くないことで、毎日少しずつ、コツコツというのが本当なんです。ぼくも人のことは言えないけど (笑) 、偉業を成し遂げる人はみんな、コツコツなんですよ。」

「そうですね。わかってるんですけど…。」

「ところでワンちゃんは体重は? 標準ですか?」

「いえ、10kgあるんで、3kgほど太り過ぎなんです。」

「標準になるよう、食事を少し減らしてあげてください。たぶん食べ過ぎで、それによる熱が皮膚の炎症の原因になっていると思います。夏は熱が助長されるのでこの季節に出るんでしょう。」

「え? そうなんですか。」

「急に減らして急に落とすとよくありません。このくらいの食事量なら標準体重が維持できる…という量を想定して、試行錯誤しながらそのワンちゃんに合った量を見つけるんです。1~2年かけて標準になればいいので…。」

「なるほど、分かりました。」

顔を診る。鼻の下の色が戻り、白くなっていた部分の血色が、他の部位と同じ肌色になる。足を触ってみる。冷たかったのが一転、すごく温かい

「もうすでにましでしょ?」

「あれ?? ましです!」

真理にかなった指導を行い、それが患者さんの腑に落ちた場合、その場で症状が改善することは珍しくない。本症例はその一つである。

 

「こういうことなんです。問題が起こった原因は何なのかを突き止め、それを解決することが本当の『痛み止め』なんですよ。先送りなんかしなくても、ちゃんと今、解決できるんです。」

「そうなんですね…。」

「痛み止めで痛みが止まっても、また無理することになるからね。」

「なるほど。」

「組織の根本的な問題は何か、それを突き止める。すると、一度にやるんじゃなくてコツコツにすること、それからワンちゃんを治すこと。この2つだということになります。今のままの体重で老犬になったら、いろんな生活習慣病が出てくるかもしれない。そうすると〇〇さんに将来的に負担のしわ寄せが来ます。いま、ワンちゃんの問題も解決しておくと、もちろんワンちゃんの問題を先送りにしなくても良くなる。それから、〇〇さんの今の症状も出なくなるし、将来の症状も出なくなる。これが組織なんです。ワンちゃんも組織の中の一つ、〇〇さんの体の一部なんですよ。」

「体」考…人はなぜ葬るのか…をご参考に。

治療

右後渓に生きた反応があるので、これを選択する。≫候補としては右百会も挙げられるが、反応するかどうかで選穴する。いろいろな診察は、要は、どの穴処が最も反応する可能性が高いかを絞り込むためと、過去から現在にかけての病態をイメージするためのものである。2番鍼を近づけ、皮膚表面の緊張を散らす。穴処に虚のスペースが開いたことを確認し、2mm刺入し、5分置鍼する。穴処を閉じない瀉法の手技で抜鍼、その後15分休憩し、治療を終える。

上の邪熱が頭痛や熱さの原因だ。火事はさほど強くないとしても、放水する水が足りないので、なかなか消し止められない。だから、陰 (放水) を補いながら、邪熱 (火事) を取り去る。

手の熱さは消失、正常の温度に戻っている。

「涼しくなったでしょ?」

「はい、楽になりました。」

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