白露…少商と粛降

猛暑が落ち着く

植え付けたハクサイは、いくらか葉っぱを虫に食べられながらも、けなげに成長しています。もう少し涼しくなれば、間引き菜でいただきます。そのころにはシュンギクも大きくなっているので、お鍋がいいですね。涼しくなったら秋の夜の楽しみです。

逃げ場のなかった暑さでしたが、9月8日頃からだったでしょうか、ここ飛鳥地方では、やっと夜だけは過ごしやすくなりました。でも12日の宵の口は蒸し暑かったですね。14日はお昼に治療所を出たときに意外に涼しいのに驚き、翌朝は13℃まで、今朝16日は12℃まで下がりました。

猛暑は一段落といったところでしょう。

「処暑…左胃兪と土気・邪熱」の、その後

「処暑…左胃兪と土気・邪熱」での熱中症の症例 (9月1日診) 、これは本当に勉強になりました。他の患者さんでも、少沢・少衝の反応を診るようにしたのですが、8割の患者さんでこれら穴処が沈んでいました。

少沢・少衝 (手小指) などの井穴は、爪の際にあり、触診での反応は取りにくいですが、ツボが小さい分、望診を使うとかえって反応が見やすい穴処です。

急性の邪熱があれば、少沢・少衝は反応しやすいと思います。「処暑…左胃兪と土気・邪熱」でも触れたように、この急性の邪熱とは暑邪のことで、脾土の弱りによって暑邪の影響を受けやすくなっていると考え、他の患者さんでも脈診で確認しました。

脈診は体の訴えを聞くことができる手法です。くわしくは「脈診の有用性」 (あわや難病…原因はゲーム?) をご参考に。

すると少沢・少衝に反応がある患者さんすべてが、牛肉・揚げ物・餅製品を摂らない、人によっては甘いもの・油ものを減らす方がよいという判定がでました。その指導を行って後、すべての患者さんで、少沢・少衝の反応が出ることはなくなりました。おかげで体調を大きく崩す方はおられなかったと思います。

おそらく猛暑が一段落するまでは、この養生が必要だと踏んでいましたが、その通りとなり、脈診で確認すると、9月10日ごろから普段の食事に戻してもよいとなりました。大阪の患者さんは2日ほど遅れて解除となりました。

急性症状では井穴が重要

名医・藤本蓮風先生は、急性のときは必ず井穴診を行うよう指導されています。ぼくもその教えを受けているので、熱中症の症例で「なにかおかしい」となった時、井穴を診るという発想が浮かんだのです。

たとえば生理後半の体調不良がある場合、隠白 (足親指) に沈んだ反応が見られます。不統血です。不統血も出血自体は急性ですね。だから隠白に反応が出るのかな…と想像してます。

井穴の望診はこの隠白でもともとよく使っていますが、それ以外で使うのは、今回の少沢・少衝が初めてです。これからヒントを得て、最近、井穴の望診をよくやるようになりましたが、ギックリ腰では左右の竅陰 (足薬指) が沈んでいました。

じつは、このギックリ腰は僕です (笑) 。時間に追われて力仕事を急ピッチでやっていてビキッと…。その日はイスからどうやって立ち上がろうという感じでした。竅陰が明らかに沈んでいたので、昼の休憩時間に治療しようと横になると、そのまま眠ってしまい、起きてみると竅陰はもう浮いていました。痛みは全然変わりませんでしたが、これで良いとそのまま経過を見ました。翌朝には驚異的回復力を見せ、仕事前のジョグ、午前診はほとんど立ちっぱなし、午後は3時間弱かけて初診、それが終わって日が暮れるまで畑を耕しました。鍼をするから効くのではありません。ツボが浮くから、体が変わるから効くのです。

少商が沈む

さて、以上は前置きです。本題は、9月10日以降、体の反応に変化が見られたことです。忘れかけるところでした。

まず、この夏を通じて反応することが多かった後渓が反応せず、かわりに合谷が沈むようになりました。また、少商 (手親指) に沈んだ反応があります。肝兪の邪熱が気滞に変わりました。

鍼をする穴処は、多くは左胃兪で、これは変わっていません。

ここから想像できることはこうです。

猛暑が一段落で、暑邪の影響は弱くなりました。今までは邪熱のもとでダメージを受けながらもそれなりに推動していた気が、涼しい時間帯が増えたことで、自力で温煦・推動をやらなければならない時間が増えてきた。邪熱が気滞に姿を変えて気機 (気のめぐり) を抑えているのです。しかも、それが性急に起こった。

ついさっきまで記録的猛暑だっただけに、落差が激しいのです。

少商は治療のたびに反応を消していますが、次の来院時にはまた復活しています。この落差に体が慣れるまでは繰り返しそうな気配です。

急な気温の低下は身体の下部に影響し、上部には相対的な熱が残る。絶対的な暑さはもう大したことはないのです。その熱を下降させるはずの気機が機能しない、それが少商の反応が示すものかを想像しています。よって主要矛盾は熱ではなく気滞です。

涼しくなって見せかけの体調はたとえ良くなったかのように見えても、そうではなく、必ずそれに代わる問題が起こっているとみるべきです。

秋らしさとともに

秋は英語でfallと言いますね。「落ちる」という感覚は四季のある地域では万国共通なのでしょう。秋は肺気が主役になります。肺気は言い換えれば「粛降」です。秋の空のように澄みきった、高い空からゆっくりと降ってくるような静粛さ・落ち着き…。そういう気持ちになるには、気機 (気のめぐり) が正常であらねばなりません。それを急な気滞が邪魔しようとしているのです。

森の木々を見てください。春から夏にかけて上に上に成長し、立秋前後にそれはマックスを迎え、葉で育て上げた栄養は、枝を伝い、幹へ根へと降って行き、やがて葉は赤に黄色に染まって落ちてゆく。

急がず、落ち着いていきましょう。そんな気持ちでウォーキングなど良いかもしれません。

この記事の下書きを読んだ、元陸上部の娘が「顧問の先生も同じことを言っていた」と言っていました。「秋は一番故障しやすいから気をつけろ」とストレッチを多くさせられ、走るのは抑えるよう指導されたそうです。実際、秋は驚くほど体が動くらしく、だからと言って調子に乗らず、落ち着いて少しずつ上げていく…ギックリ腰になる前の僕に言ってあげたい話ですね。

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