処暑…左胃兪と土気・邪熱

陰陽転化の準備

ニンジンがうまく発芽しました。シュンギクも本葉が出てきました。キャベツは種まきからひと月がたち、順調です。白菜の種をまきました。

家庭菜園が好きで、朝から畑仕事に汗を流し、午後は机に向かって勉強?する…これが理想的な僕の休日のすごしかたです。夏場は朝の涼しいうちに机に向かえばいいのでしょうが、やはりまず汗を流してから午後から机に向かう方が気持ちがいい。

午前から昼過ぎまで汗をたくさんかいて、一仕事終えてシャワーをあびると、気持ちもスッキリし、昼食がおいしい。食事をとりながら昼のテレビ番組で世の中の出来事に興味をそそられ、そして静粛な落ち着いた心で机に向かい、東洋医学の難しさを解くべくいろいろ発想する…。

実は、この一日のサイクルのなかに、陽から陰への転化があります。

処暑・白露を経て、やがて秋分となって昼夜の時間が同じとなり、逆転して夜 (陰) の時間が増えていきます。その劇的変化の序章が、まさに今なのです。

ところがどうでしょう。一仕事終えた後の至福の充実タイムのはずが、とても静粛とは言えないほどの暑さです。もう9月なのに。

やがて迎える静粛の季節…秋分以降の秋のために、その劇的変化の瞬間のために、いままさに体はその準備をしているのです。そう、畑から家に戻り、シャワーを浴びて食事をとる。次なるステージへの準備です。

しかし、その準備がうまく整わない。暑すぎるからです。

午前の畑仕事 (陽) から、昼食をはさんで落ち着いた時間 (陰) に入るように、処暑から白露は土気 (脾臓=消化吸収栄養機能) が盛んになり、秋分へとバトンタッチをするのです。ところが、この土気がいま、盛んになり切れない。異常気象の暑さ (暑邪) のせいです。暑すぎて土気が追い付いていないと言った方がいいかもしれません。

よって、今は脾胃を立て、邪熱を取り除く治療が大切であると言えます。ふだん熱証とは言えない人でも、一時的に熱証になります。

熱中症…興味深い症例

こんなことがありました。

8月31日午後5時ごろ電話があり、熱っぽいので診てほしい…とのことです。背中を触るとかなり熱く、発熱していました。無汗です。印堂の反応から流行性の外邪による発熱 (人に移す) ではないと見ます。天突の反応から表証はないと見ます。

つまり、コロナではないと診立てるとともに、六経・衛気営血弁証のフルイにかかる外邪性のものではないと判断したのです。

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外邪には人に移すものと移さないものがあります。「新型コロナウイルス偶感…流行の意味するもの…東洋医学的見地から」で詳しく展開しました。

「朝は普通だったんです。でも11時ごろからいつもとは違う暑さを感じ出し、嫌な熱さが出だしました。」

ここまでの情報を勘案すると、熱中症が疑わしい。熱中症は外邪によるものです。ちなみにこれは移らないので非ウイルス性の外邪ということになります。

「でもそのまえに、今朝の明け方に寒いな…と感じたんです。そのとき、あ、やってしまったかも…と思いました。」

これを加味すると、ますます外邪が関係する可能性が高くなります。しかし、何度確認しても天突に反応がない。表という関所を犯した形跡がないのです。これはおかしい。

体中を撫でまわす。凝視する。すると、左右の少沢・少衝が沈んでいることに気付きました。これは急性に邪熱が起こったことを示します。手足の井穴すべてを診ても、沈んでいるのはここだけです。この反応が取れなければならない。急性の邪熱とは、ここでは明らかに暑邪のことです。にもかかわらず、天突が反応しないのです。

ここで、未明に寒い…と感じたことの意味を考えました。そういえば、表証という形を取らずに寒邪が侵入することがある。口から入る寒邪です。寝冷えで一度だけ下痢した…というやつ。症状は軽いですが外邪の影響を受けています。こういうのは口から寒邪が入ったものだと僕は考えています。

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口から入る寒邪 については、便秘…東洋医学から見た原因と治療法の「4.陽虚…冷えの便秘」をご参考に。

そういう入り方で、口 (太陰肺・陽明胃) に入った。それらのすぐそばにあるのは太陰脾です。もともとこれに弱りがあれば、太陰脾土が冷えてしまいます。冷えた (弱った) 脾土に強い暑邪が光のように照り付ける。重厚で植物をはぐくむ土に日光が照り付けてもそう熱くはなりません。しかし、砂漠のような痩せた土に照り付けるとどうでしょう。表面だけが急に暑くなります。

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脾臓は土とそっくりです。詳しくは、便秘…東洋医学から見た原因と治療法の「脾臓は土」をご参考に。

こういう熱中症のありようもあると学びました。じっさいこの患者さんは、上 (上半身) が熱く下 (足) が冷えていました。この暑邪も口から入ったと言えるでしょう。そして弱った太陰を急激に熱くした。発熱そのものは、暑邪による外感発熱というよりも、内傷発熱 (気虚発熱・陰火) によるものがウェイトとしては大きい。暑邪は表を通らず、口から入って脾土を熱くしたのです。だから天突に反応が出なかったのです。

脈診で確認すると、普通のごはんではエラーで、今日はおかゆにすべきことが分かりました。急に、大きく脾土が弱ったことがよく分かります。

穴処は左胃兪の平補平瀉、少沢・少衝が浮くのを確認して治療を終えました。

空間診が導く左胃兪

最近の臨床で印象深いのは、実証でとることも少なくないこと、左胃兪を多用していることです。胃兪には多くは邪熱があります。左胃兪を瀉法するケースが多くなったということです。

ぼくの場合、弁証で証に対する穴処を決めるというよりも、体表観察の結果としてその穴処にたどり着く…という方が近いです。そうしてたどり着いた穴処の意味するところを、弁証によって得られたロジックと照らし合わせて、つじつまが合うかどうか。合わなければ、僕に何かが足りないのです。

たどり着くまでの大きなコンパスは「空間診」です。ぼくは圧痛で探らずに手のひらをかざして診察しますが、百会の空間診の重要さを改めて考えさせられました。

「立秋…脾兪と新型コロナ」でも述べましたが、陰から陽に転化する寸前である今の時期は、督脈から任脈に主役の座が譲られる寸前であるということが言えます。督脈は後、任脈は前を支配しますが、そのいずれがアクティブになっているかを空間診で知る場合、百会が不可欠です。

神闕が空間診で反応しておらず、百会で後ろに反応があるとき、懸枢には空間の反応がハッキリ出ていることに気付きました。いまは百会の空間で後ろに出ることが圧倒的に多く、よって神闕周りの四霊 (滑肉門・天枢・大巨) を使わず、懸枢周りの穴処背部兪穴を使っています。ほとんどが左胃兪です。督脈を治療する意図があります。

その他の穴処は、右百会・右合谷・右後渓・右滑肉門・左帯脈など。

背部兪穴の大きなツボに鍼をあてがい、気を集めたり散らしたりしてから刺入する。そして鍼を刺し進める一瞬の、気の集まり方・散り方・流れ方…。鍼尖にそんなことを感じながら、診察ベッドに臨む今日この頃です。

コメント

  1. りつ より:

    お世話になっております。
    統合失調症や躁鬱も治療可能との事ですが、ある程度発症から期間が経過しても多少は改善可能でしょうか?

  2. りつ より:

    治そうという気力が大事なのですね。いつもありがとうございます。

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