立冬…新型コロナと「土」

 

景色が赤に黄色に色づく穏やかさとは裏腹に、忍び寄る冬の風を路上に感じつつ、ウイルスの流行の行方を思わざるを得ません。

足三里に注目

いま、すべての患者さんで必ずチェックするようにしている穴処 (ツボ) があります。足三里です。

この穴処は腹痛あるいは食欲不振の患者さんでは必ず見ます。すると多くは此処に実の反応が見られます。その反応が消えるように治療すると、その場で穴処の反応が消えて症状が改善することが多いです。

まれに虚の反応が出ますが、かなり弱った人に反応が出る印象です。

そういう場合に診るようにしているのみで、いつもは診ない穴処です。

そんな足三里の反応ですが、いま、足三里に虚の反応が出ている人が多く見られることに気付きました。

11/5午前診

気付きの発端は、11月5日の午前診で、皮膚の乾燥と痒さを訴えられた患者さんです。この時期になると出るらしく、お風呂上りが特にひどい。こんな場合は血虚を疑います。ところが、三陰交を診ても反応がない。

急性に出てきているので、手足の井穴 (爪の際にあるツボ) を診ると、中衝に実の反応があります。表証はありませんでした。これが取れるように右合谷に補>瀉の鍼をすると、すぐに症状が改善しました。

おそらく、中衝に出ているのは、気候の変動を意味します。11月3日あたりに、ここ飛鳥地方では乾いた寒風が吹きました。表証がないのに気候の影響受けたというのはどういうことかな…と考えていました。

11/5午後診

その日の午後診。子供の患者さんが11月3日の朝に嘔吐したとのことです。

まず表証を疑い、肺兪付近の反応を診ますが、出ていません。ここに反応がないということは、表証自体になりにくいことを示しますので、今現在から2.3日前までの表証の履歴は却下できます。

その朝の食欲がなかったということです。足三里のツボなど普通は診ないのですが、確認してみました。すると虚の反応が出ています。これには驚きました。

聞けば、少し太り気味なので、コメの量を減らしていたとのことです。後で説明しますが、これが大きな原因となります。しかし、いくらコメを減らしたところで、足三里が虚すほどひどい反応になるものではありません。

子供にでているのなら、もしかしたら大人にも出ているかもしれない。ここで午前診の乾燥肌の患者さんの病理がひらめきました。あれはきっと陰火だ。足三里の虚はいろんな人に出ている可能性がある。

なぜ足三里に反応が

寒くなった時の変化

気を付けて診ていくと、ハッキリしているものと中等度の反応も含めると、7割くらいの患者さんで右足三里の虚が見受けられました。しかし、そんなに多くの患者さんが、「かなり弱っている」のだろうか?

とにかく、大勢の方にそろって同じ反応が出てくるのは、気候の変化によるものです。

たとえば急に寒くなると、なぜ体調に変化が見られるのでしょう。大きくは3つに分類できます。
①表証 (風寒) によるもの。
②日の短いシーズンに入ると、陰を入れる器が大きくなるべきだが、なお小さいため、陰が入りきらずにあふれた分が水邪になる。
③土 (脾臓) の重濁さが希薄なため、すぐに冷たくなる。

上記の、中衝の反応は③が原因であると分析しました。詳しく説明します。

土のような機能が生命にはある

脾臓というのは東洋医学の言葉で、西洋医学の言葉に翻訳するなら消化器です。しかし消化器よりももっと大きな概念でもあります。脾臓は脾土と呼ばれ、土のような働きをいいます。

地球で考えます。地球は大きな土ですね。大きくて分厚いからこそ、すぐに熱くなったり寒くなったりしない。もし地球が小さく薄っぺらいと、少しのことで熱くなったり寒くなったりするはずです。

薄っぺらいアルミホイルにライターで火をかざしたら、すぐに熱くなります。日を遠ざけるとすぐに冷たくなります。もし分厚い鉄板に火をかざしたら、すぐには熱くはなりません。遠ざけると、すぐには冷たくなりません。温度を抱きとめてくれるのです。

抱きとめる力

抱きとめるのは、「温かさ」だけではありません。豊かで健全な土は、フワフワでスポンジのように水分を抱きとめ保持します。栄養分も保持します。しかも適度な通気性 (循環) を保ち、微生物 (腸内細菌) を養い、動植物 (細胞) を育てます。まるで人体そっくりですね。

これらすべてを「抱きとめる力」が脾臓 (土) です。

脾臓が薄っぺらい状態で急に寒くなると、すぐに冷えてしまい、健康に悪影響が出る。③はそういう病理で起こります。

それだけではない、少し暑いとすぐに邪熱を起して症状が出る。少し動くと気虚を起し、少しストレスがあると気滞を起し、少し食べると湿痰を生じる。これらはすべて「抱きとめる力」がたりない、すなわち土が小さく薄っぺらくなっているからです。

足三里の虚は、それが危険なレベルに達していることを、生体が知らせてくれている反応なのです。

いま必要なこと

この右足三里の反応は早く消しておかなければなりません。治療をすればすぐに消えます。しかし、その後の生活の仕方によって、その良い状態が持続するか、また反応が出てしまうかが決まります。

どういう生活をすれば、足三里の反応を出さずに済むか。

間食をひかえる

まずは間食を控えることが必要です。間食とは朝10時とか昼3時とかに食べるおやつのことです。お菓子が食べたければ食後のデザートとして食べる。その方が、脾臓にかかる負担がウンと軽くなります。

白米を主食にする

もう一つ、白米を主食にすることです。白米5に対しておかず (食後のデザートを含む) を5にし、白米がもう一口食べたいなと思うところで食事を終えると、腹八分目になります。

ケーキの腹八分目とコメの腹八分目は違います。本当の腹八分目とは何か。
自分でできる4つの健康法▶その一、食べる」をご参考に。

白米は土のようなものです。おかずは肥料です。土が少ししかない植木鉢に肥料をたくさん施すと、根腐れを起しますね。土がたくさんで肥料が少なすぎても花は育ちません。バランスが大切であり、しかも土台は土であって肥料ではありません。

土は我々を根本的に支えてくれているものです。でも、慣れてしまってありがたさに気付けない。白米も同じです。

ついでに言えば、僕の奥さんも土と同じです。そこを忘れるとうまくいきません。 (経験談^^)

間食、ごはん:おかずに注意すると、右三里の虚の反応が復活しません。これは経験的なものです。

土を重厚にする

土を大きくしていくというのは、体を大きく体重を増やすことではありません。機能的な土の働きをよくするということです。

コメを食べると力がついて動きやすくなります。これは体力ですね。フィギアスケートの羽生選手もコメでないと力が出ない、とおっしゃっていました。ここは理論ではなく実際です。

白米を食べたら太る…という人は、それが白米で太っているのか、おかずで太っているのか、お菓子で太っているのか分かって言っているのでしょうか? 大して美味しくない…コメだけを悪者にしようとしていないでしょうか?

白米は動く力に変わります。動かなければ筋肉も骨も血も強くなりません。動くことは土台です。まさにコメは土で、おかずは肥料なのです。

弱りが新型コロナに直結する?

さて、このような「かなり弱っている状態」が、多くの患者さんで診られるのはなぜでしょう。もしかしたら日本全国、いや世界中で…?。

いやでも新型コロナが頭をかすめるのです。

新型コロナは、大きな意味で特殊な異常気象とも言えます。気象は目に見えません。暑すぎたり寒すぎたり、湿気が多すぎたり、風が吹きすぎたり、乾燥しすぎたり、これらの眼に見えない働きによって、体調が崩れます。

気候の変動のことを外邪と言います。「外邪って何だろう」をご参考に。

新型コロナという特殊な、自覚しにくい異常気象の影響を、我々は少しずつ受け始めているのかもしれません。もしくは体が弱った結果、新型コロナの感染が広がりやすくなるのかもしれません。くしくも、11月に入ってから新型コロナウイルス感染者が増えてきています。

包容力はこの体にも

分厚く豊かな土は、暑さや寒さ、そしてウィルスさえも受け止め、柔らかく包み込んでくれるはずです。抱きとめる力…包容力…。この大自然…つまり地球という「大きな土」の持つ包容力は、この「小さな体」にも備わっている。

新型コロナは自然災害です。水害と同じく、堤防という防ぎと、避難場所という最後の手段が必要です。避難場所がないから人心が乱れるのです。この避難場所こそ、土を豊かにすることです。そのための方法はたくさんあるでしょう。僕の頭で考え得た方法は、間食をひかえることと、白米を主食にすること…つまり腹八分にすることであるということです。

お互いに気を付け合っていきましょう。新型コロナという自然災害の避難場所…些細なことに影響されない体…そのためには「重厚な土」を身に着けることなのです。

最近よく使う穴処は、滑肉門・百会・合谷・内関・列缺などで、どれか一穴を使います。ほとんど右です。まれに左も使います。足三里は直接には使いにくいので、間接的に反応を消すようにしています。邪気としては気滞で出ているのが順当で、寒・熱・湿で出ているのは良くない印象です。

カゼ症状が見られていても、脈が浮いたり表証やウイルス感染を示す反応が見られないケースが散見されます。そのカゼを治すポイントは足三里の反応を消すことだと考えています。つまり、陰火ということでしょうか。陰火とは、急な脾土の縮小…と捉えています。

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